研究課題/領域番号 |
21K03867
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
尾形 公一郎 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (50370028)
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研究分担者 |
星 崇仁 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10757892)
上野 崇寿 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (30508867)
稲垣 歩 大分工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (50633400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 粉体輸送 / 流動性 / 振動流動化 / イオン風 / パルス電源 |
研究実績の概要 |
本研究では,振動流動層により粉体を分散して輸送する技術と,高電場を用いて粉体を輸送する技術に着目して粉体薬剤の輸送噴霧システムの構築と輸送噴霧機構の解明を目的としている。今年度の研究では,粒子物性の測定,振動流動化による粉体の分散輸送特性の調査,高電場での流体と粉体の流動特性の調査,パルス電源製作を行った. 実験条件として,粉体分散供給部への空気速度,容器底部から空気供給管の出口部までの高さおよび鉛直方向の振動強度を変化させ,輸送条件の確認,供給空気の圧力測定および単位時間あたりの粉体輸送量の測定を行った.そして,直流電源による高電場中での粉体の帯電特性,電極から発生するイオン風の風速の測定およびパルス電源の動作確認を行った.使用粉体にはシリカと薬剤粉体を用いた.8種類のシリカ粒子に対してはパウダーレオメーターによる付着力および流動性評価を行い,平均粒子径が小さいと付着力が大きくなり,流動性が悪くなることを確認した. 振動流動化による実験では平均粒子径の異なる3種類の粉体の輸送を行い,粒子径が大きいほど輸送量が多いことがわかった.また,供給空気速度,振動強度が大きく,供給空気管が粉体層内部にある条件で分散状態および輸送量が良好であることや容器内部の圧力が粉体輸送量に影響することが確認された. 高電界を用いた粉体輸送に関しては,高電界中に粉体薬剤を供給すると正電極に引き寄せられ,負に帯電する性質を有することが分かった.また,コロナ放電によって発生するイオン風の風速は,電圧の大きさと電極間距離が影響することを確認した.さらに,パルス電源製作において,巻数比1:36のトランスと負荷抵抗2kΩを介したことで,充電電圧の約26倍の出力電圧が発生したことを確認し,製作したパルス電源が正常に動作することが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,(1)粒子特性,(2)振動流動層による粉体の分散輸送特性,(3)高電界パルス電場中での粉体輸送特性を解明して粉体薬剤の輸送噴霧システムを構築することが目的である。この目的に対する現在までの進捗状況は以下の通りである。 目的(1)の粒子特性について,現在,開発中の粒子である粉体薬剤は使用量が限られているため,本研究では薬剤粉体と同じ負極に帯電するシリカ粒子を用いて粉体輸送実験を試みる方針である。そこで,R3年度は粒子径の異なる8種類のシリカ粒子を試験用粒子として準備し,パウダーレオメーターを用いて安定性流速変化試験,通気試験,せん断試験を行い,粉体の流動性,通気性および付着性の評価をし,粒子特性の把握はほぼ達成できている状況である。 目的(2)の振動流動層による粉体の分散輸送特性について,当初予定していた粉体を封入するバイアル瓶を模擬した容器の製作や,その容器を用いた振動流動化輸送装置を製作した。振動流動化輸送実験装置については,今後の改良も必要であるが,システムとしてはR3年度の研究で概ね完成した状況である。また,R3年度の研究で粉体の良好な分散および輸送特性が得られる条件を明らかにすることができた。 目的(3)の高電界パルス電場中での粉体輸送特性について,R3年度は既設の直流電源を用いてコロナ放電で発生するイオン風の流動特性の調査を行い,電圧の大きさと電極間距離が影響することを明らかにした。世界的な半導体不足の影響でパルス電源の部品や計測器の納入が遅れ,電源製作が大幅に遅れたが,何とか年度内にシステムを構築でき,動作試験を実施することができた。一方,当初予定していたパルス電源を用いた粉体輸送実験を実施することはできなかった。 目的(1),(2)は概ね順調に進んでおり,目的(3)もパルス電源の動作試験まで進んでいることから,研究の進捗状況は概ね良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに,目的(1)の粒子特性については,薬剤粉体と同じ負極に帯電するシリカ粒子の流動性,通気性や付着性の評価は進んでいる。一方で,壁面付着に影響すると考えられる粒子と壁面との摩擦係数や振動流動化特性に影響する圧縮性や透過性の評価が済んでいない。このため,壁面摩擦試験,圧縮性試験,透過試験を行い,これらの物性評価を行う。さらに,使用を想定する薬剤粉体を再度入手して,その粒子特性の評価も行う。 目的(2)の振動流動層による粉体の分散輸送特性の調査については,R3年度に製作した振動流動化輸送実験装置を用いて引き続き試験を行う。これまでに粒子径を変化した3種類のシリカの輸送実験を行った。R4年度はさらに粒子径を変化させて輸送特性に及ぼす粒子径の影響の調査を行う。さらに,医療用の針での輸送と噴霧を実現するためにマイクロ流路の製作,輸送実験と噴霧実験を行う。加えて,粉体薬剤を用いた輸送および噴霧実験も実施する。 目的(3)の高電界パルス電場中での粉体輸送特性については,まず,R3年度に製作したパルス電源の動作試験を重ねてパルス電源の特性を把握する。今年度はテーパースパイラル型電極の製作および最適な電極構造を検討する。その後,製作した電極を用いた電界特性やイオン風の流動特性の調査を行う。さらに,パルス電場を用いた場合の粉体の輸送および噴霧特性の調査も行う。 今後は,研究の進捗状況および達成度に応じて,国内外の講演会での発表や論文投稿によって得られた成果の発信を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算は概ね予定通りに使用しているが,物品費のうち消耗品費の使用が当初予定額を下回ったために次年度使用額が生じた。 研究のさらなる進展のために,電極製作に必要な3Dプリンタ樹脂,アクリル材や金属などの消耗品として使用する予定である。
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