研究課題/領域番号 |
21K03871
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
亀谷 幸憲 明治大学, 理工学部, 専任講師 (60759926)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スカラー源推定 / 経路最適化 / 乱流 |
研究実績の概要 |
流れの中に存在する異なるスカラーの発生源同時推定及びその接触回避経路探索アルゴリズムの構築と実証のため,対流している異種スカラーの各発生源について,局所センサー情報から随伴解析に基づき推定するアルゴリズムを構築した.また,構築したアルゴリズムを,壁に囲まれた2次元流れ場に2つの異なるスカラーがそれぞれ一つずつ存在する系を想定し,センサー数及び配置を変えながら数値解析を用いて検証した.この際,本来計測によって与える局所情報は,直接数値シミュレーション結果で代用した.その結果,アルゴリズムによる,それぞれの発生源推定を達成したが,その推定精度はセンサの数や配置に強く影響を受けることがわかった。 一方,2種のスカラーをそれぞれ温度(主スカラー)及びガス(副スカラー)と仮定し,ガスへの接触をできるだけ回避しながら熱源へと早期に到達する経路探索アルゴリズムを構築した.時間平均されたスカラー場の中に初期位置を設定し,温度と接触ガス濃度に閾値を設けて隣接する周囲空間の計測値から陽的に進行先を逐次決定し,熱源到達時間及びスカラー接触回避についてどちらを優先するかを段階的に設定できる経路探索アルゴリズムを構築した.時間平均された2次元スカラー場群を完全に予測できたと仮定することでアルゴリズムを検証した.その結果,優先度に合わせて異なる経路の決定が達成された.しかし,直近の進行方向の決定に対する優先度が制約として働き,効果的な経路決定にはまだ改善の余地がある.また,到達経路の探索成功率も流れ場に強く依存することがわかった. 最後に,スカラー源推定及びそれによるスカラー分布予測結果に経路探索を図った検証を実施し,スカラー源推定と経路探索の両アルゴリズムの統合的評価を行い,一定精度の経路探索が達成されることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目標にしていた随伴解析を用いた異種スカラー源同時推定及び副スカラーへの接触回避経路最適化アルゴリズムは2次元場にてそれぞれ検証され,その一定の有効性を確認できた.そのため,研究設備が整ったことも含め,概ね計画通りに進んでいるとした.しかし,異種スカラー源推定の精度については,センサーの数及びそれらの配置の依存性を調査する必要がある.また,経路最適化については,現在のアルゴリズムでは直近の進行先決定に近接空間の情報のみ利用することによって非効率的な経路決定に陥る可能性が高い.この点について,機械学習を用いた経路探索を導入することで,より効果的な経路決定アルゴリズムへと拡張する.
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今後の研究の推進方策 |
今後,異種スカラー源推定の対象を3次元流れ場へと拡張しスカラー源推定アルゴリズム及び経路探索アルゴリズムの数値シミュレーションによる検証及び実証を行う.この際,流れ場は単純な矩形状の領域を仮定する.推定精度についてはセンサーの数及び配置の精度依存性を調査し,建物どの閉鎖空間に固定センサを配置する上での指針を得ることを目指す.また,経路探索アルゴリズムに強化学習を用いることでより効果的な経路決定へのアルゴリズム修正を図る.一方で同様形状の流れ場を有する風洞装置を作成し,壁面から固定センサを一定間隔で挿入してスカラー計測を行い,スカラー源推定アルゴリズムにおけるセンサー情報及び実証のためのスカラー分布情報を得る実験系を構築する.スカラーとして熱源及び二酸化炭素等の不燃ガスの濃度を用い,各センサー位置には双方のセンサーが配置されているとする.時間平均計測値を随伴解析に取り込み,推定結果と実際のスカラー場を比較してアルゴリズム実証とする.同様に強化学習を適用した経路探索アルゴリズムは,離散的に配置された温度センサ、濃度センサ情報から実証される.その後,単純な矩形領域に3Dプリンタを用いて作成した障害物を配置してより実際の建物環境に近い場でアルゴリズムの検証及び実証を行う.
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