研究課題/領域番号 |
21K03873
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉野 正人 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (00324228)
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研究分担者 |
鈴木 康祐 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (10735179)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 格子ボルツマン法 / 氷スラリー / 固液二相流 / 融解・凝固 / 相変化 |
研究実績の概要 |
固液相変化モデルの構築ならびに計算効率の高い固液二相系数値計算法の確立を目指すため,初年度は円管内スラリー流れに対する計算コードの開発を行った.具体的には,熱を考慮した埋め込み境界-格子ボルツマン法(熱IB-LBM)に曲面を表現するための手法(改良bounce-back法)を実装し,円管内を流動する氷スラリーの数値計算を行い,レイノルズ数,IPFおよび円管直径と粒子直径の比である管径比が熱伝達特性に与える影響を調べた.計算モデルとして,円管内に複数個の氷粒子(等温条件:T=0)をランダムに配置し,壁面となる境界に等温条件(T=1),出入口となる境界に圧力差を伴う周期境界条件を用いることで,発熱する円管内を氷スラリーが流動する様子を再現した. まず,レイノルズ数の影響を調べたところ,レイノルズ数が高いほど円管壁面上の平均ヌッセルト数が増加することがわかった.これは,レイノルズ数が高くなるほど熱の拡散に対する流体の速度が上昇するため,熱源近くの温度境界層が大きく乱されたことが要因であると考えられる. 次に,IPFの影響を調べたところ,IPFが高いほどすなわち氷粒子の数が多いほど,壁面上の平均ヌッセルト数が増加することがわかった.これは,IPFが高いことで氷粒子同士が頻繁に衝突し,氷粒子が熱源近くに多く点在したためだと考えられる.また,IPFと平均ヌッセルト数の関係を既存の実験結果と比較したところ,ヌッセルト数は実験データと同程度の値を示したが,正方形ダクトの場合と同様にIPFに対する平均ヌッセルト数の増加率は低いままとなった. 最後に,管径比の影響について調べたところ,IPFが同じ場合でも管径比が小さいほど氷粒子の総表面積が増えることで領域内の温度を低く保ち,IPFに対する平均ヌッセルト数の増加率も実験値に近づくことがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円管内を流動する氷スラリーの数値計算法は,概ね確立したといえる.
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今後の研究の推進方策 |
構築した固液二相系数値計算法の計算コードを大規模並列計算用の固液二相系熱IB-LBMコードに拡張し,計算精度ならびに計算効率の向上を行う.また,両計算結果を比較することにより,プログラムの妥当性検証を行う. 固液相変化モデルの構築については,2年目より研究分担者として加わった浅岡准教授の実験データとの比較から,現実に近いモデルへの改良を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた学会がオンライン開催になったため,当初の金額と使用額に差が生じた.次年度には,別の学会にも参加し口頭発表ならびに情報収集を行う予定である.
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