研究実績の概要 |
微細な正方形断面流路表面にゼオライトを担持させたモノリスを用いた二酸化炭素の吸着について,スピーカを用いた音響加振が吸着速度に及ぼす影響を明らかにすることを目的として実験を行った.その結果,音響加振(圧力振幅25 Pa以上)により吸着速度に関連する物質移動係数が増加し,強い加振ではより高い吸着促進効果を示した.また,速度変動の腹部にモノリスを設置することで,吸着促進効果がより大きく表れた.より高い流速では吸着が促進されることを確認している.微細流路壁面近くの境界層厚さが音響粒子速度変動により薄くなることで濃度勾配が急峻となり,吸着が促進されたと考えられ,今後流れ場計測から原理解明を進める予定である. 実験では音響加振源としてスピーカを用いたが,工場配管などに存在する溝部(キャビティ)周りの流れから発生する空力音(キャビティ音)の利用の可能性について,圧縮性Navier-Stokes方程式に基づいた数値解析から検討した.さらに,キャビティ流れの中に平板列(スタック)を設置することで熱音響エンジンによる音の発生現象と流れからの音の発生の空力音現象の連成に着目した.キャビティ音はスタックに80, 160 Kの温度差(低温の排熱利用を想定)を与えた場合,温度差なしの場合に比べ発生音が増大し,温度差が大きくなることで音がより強まることが示された.キャビティ内部では主流速度30 m/sでは, 最大134 dB(振幅135 Pa)の音が発生し, 二酸化炭素の吸着促進に十分な大きさの音が生成されることを予測した.実際の二酸化炭素吸着時にはより低流速の気流となることも予測されるため,今後はより実際の吸着条件に近い流速条件で強い音を発生させるため,キャビティやスタック形状,スタックの温度勾配などの条件について,その発生音への影響を明らかにしていく予定である.
|