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2022 年度 実施状況報告書

逆圧力勾配下における乱流境界層の統計量スケーリング則と新たなLES基盤の創出

研究課題

研究課題/領域番号 21K03876
研究機関岡山大学

研究代表者

関本 敦  岡山大学, 環境生命科学学域, 准教授 (00814485)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード乱流境界層 / 逆圧力勾配 / スケーリング / ラージ・エディ・シミュレーション
研究実績の概要

曲面や角を有する複雑形状周りの数値シミュレーションの精度向上は,航空機やタービン翼などの流体機械の性能向上につながるため工学的に重要な課題である. 既存の乱流モデルは剥離点近傍での予測精度が大きく低下する問題があり,曲面や複雑形状へ適応可能なモデルは未だ発展途上である. 現状の乱流モデルは,計算機が十分に発達していない時代に, 単純な流れを用いて開発されたモデルが標準モデルとなって産業利用が進んできたが, 近年では,小スケールの渦運動のみをモデル化して,大規模スケールの渦運動の時間発展方程式を解くラージ・エディ・シミュレーション(LES)が設計現場でも利用されつつある. しかしながら, LESでは壁面近傍のエネルギー生成のピークを十分に解像する必要があり, 複雑な形状を有する流体機械内部の流れなどへの応用には,壁面近傍の乱流のモデル化が現在でも必要である. そこで利用されているLESのための壁モデルは, 真っ直ぐな平板上で開発されたものを, 曲面や複雑形状のような剥離流れを伴う乱流に対しても利用されており, 妥当なモデリングがなされていない.
本研究では,乱流モデルを用いない高精度の直接数値シミュレーション(DNS)の結果を利用し, 剥離する直前の乱流境界層にも適用できるLES壁面モデルの開発を行う. 今年度は,以下を実施した:
(i) GPUを利用した計算機環境の構築,及び,GPUに対応したDNS/LESプログラムの作成・検証; (ii) 壁面乱流への圧力勾配の影響を系統的に調べるためにCouette-Poiseuille流れの, 直接数値計算を実施し, 逆圧力勾配と乱流統計量の関係について調査; (iii) カノニカルな壁乱流である平行平板間乱流の浮力による渦構造へ影響を調査した.
以上のさまざまな乱流DNSデータを活用して, LES壁面モデルの予測精度向上を目指す.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

GPUワークステーションを用いてGPUに対応したシミュレーションコードの作成を進めている. GPUに対応したプログラミングの知識が求められるが,東京大学情報基盤センターでのGPU移行支援などに参加し,情報収集を継続的に行っている. AIや機械学習の技術の進展により,今後のスーパコンピュータにはGPUのような加速デバイスが搭載されることは間違いなく, GPUに対応したDNSのプログラムを一刻も早く整備することが,今後の研究の継続のために必要不可欠である. これまでのDNSコードのアルゴリズムをGPU計算に適用したものに置き換え, それらを東京大学情報基盤センターニュースの記事として報告した. また, 渦構造の可視化などポストプロセスを効率的に行えるように研究環境を整えており, 東京大学情報基盤センターの若手利用によって得られた Couette-Poiseuille 流れのDNSデータから流れの大規模構造の特徴や統計量に関する知見を得た.
また,剥離メカニズムの解明だけでなく,その制御も工学的に重要である. 新た平行平板感乱流や一様せん断乱流に温度成層の影響を加味したDNSを実施して,乱流変調を系統的に調べ, 浮力が働くオズミドフスケールと乱流のスケールが同程度となるときに乱流中の渦構造に大きな変調が見られることを明らかにした.

今後の研究の推進方策

逆圧力勾配境界層乱流のDNSデータベースと統計量のスケーリングに関する結果を, ジャーナル投稿しつつ, GPUに対応したシミュレーションコードの作成を継続して進め, 比較的安価にできるLES手法の確立を目指す. また, 複数GPUの対応も行う予定である.
Couette-Poiseuille流れを利用して, 逆圧力勾配の影響を系統的に調べ, 大規模構造の形成メカニズムや,加熱に対する変調を調べる.これらの結果は,剥離制御の新たな指針にすることが期待できる. できるだけ基礎的・理想的な系を作成し, 安定密度成層下における一様せん断乱流の抑制効果と浮力の強さやプラントル数の影響を系統的に調査する. これらをせん断乱流のLESモデリングの基礎情報とし, 逆圧力勾配を有する複雑な形状まわりのLESを開発・実施してDNSデータベースと比較検証する.
また,上記の研究を行うことで, GPUに対応したDNSコード群を整備することもできる. 混相流など様々な複雑流動のモデリングへの応用もめざす.

次年度使用額が生じた理由

世界的な半導体不足とインフレによる影響を受ける前に物品を購入しており,計画通りに予算執行できている.次年度繰越分は物品費に利用する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Monash University(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      Monash University
  • [雑誌論文] ミニマルスパン・チャンネル乱流の直接数値計算による乱流伝熱解析2022

    • 著者名/発表者名
      関本 敦
    • 雑誌名

      東京大学情報基盤センター・スーパーコンピューティングニュース

      巻: 24(4) ページ: 37 - 39

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Couette-Poiseuille流れにおける大規模構造の解析2022

    • 著者名/発表者名
      関本 敦
    • 雑誌名

      東京大学情報基盤センター・スーパーコンピューティングニュース

      巻: 24(5) ページ: 23 - 30

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 統計的に定常な一様せん断乱流への浮力の影響2022

    • 著者名/発表者名
      関本 敦
    • 学会等名
      日本流体力学会年会2022
  • [備考] Sekimoto Lab.

    • URL

      https://sites.google.com/view/sekimoto-lab/research

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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