研究課題/領域番号 |
21K03881
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
高垣 直尚 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00554221)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱輸送 / 気泡層 / 乱流輸送 |
研究実績の概要 |
台風など熱帯低気圧下における高速気流場の海表面近傍は,液滴の飛散や気泡の巻き込みなどの激しい砕波を伴う複雑な気液二相乱流場を呈し,特に海表面は,気泡同士が連続的にくっついて層を成す,いわゆる気泡層に完全に覆われることが報告されている.また,このような気泡層を伴う気液界面を通しての伝熱現象は自然界や工業装置内でしばしば見受けられる.そこで本研究では,高速気流による超高密度気泡層の生成機構・気泡層を通しての熱輸送機構を解明することを目的とする.2021年度は主に,(1)九州大学応用力学研究所の大型風波水槽にて測定された波高データ解析を行い,ロングフェッチの状況において高速気流により発生した気泡層を通しての運動量輸送機構の解明を行った.その結果,ロングフェッチの状況であっても,Takagaki et al. (2012)で報告されたショートフェッチの状況における運動量輸送機構と関連性の深い輸送機構を持つ傾向が確認された.(2)兵庫県立大学において小型風波水槽の準備を行った.2022年度には本水槽を用いた気泡層実験を行う予定である.(3)近畿大学の小型風波水槽にて測定された風・波高データ解析を行い,気泡層を伴う気液界面を通しての輸送機構に関する新たな実験技法を確立した.これらの研究実績の一部は,査読付き英文誌1報に掲載された.一方で,成果報告を予定していた国際会議は新型コロナウィルス(COVID19)の影響により中止となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は主に,(1)九州大学応用力学研究所の大型風波水槽にて測定された波高データ解析を行い,ロングフェッチの状況において高速気流により発生した気泡層を通しての運動量輸送機構の解明を行った.その結果,ロングフェッチの状況であっても,Takagaki et al. (2012)で報告されたショートフェッチの状況における運動量輸送機構と関連性の深い輸送機構を持つ傾向が確認された.これは,ロングフェッチの状況においてもショートフェッチの状況と類似の熱輸送機構を持つ可能性を示唆している.また,温水作製について検証を行った.(2)兵庫県立大学において,気泡層実験のための小型風波水槽の準備を行い,適切な流動場が作成できることを確認した.(3)近畿大学の小型風波水槽にて測定された風・波高データ解析を行い,気泡層を伴う気液界面を通しての輸送機構に関する新たな実験技法を確立した.本技法は,風波高さを水面下に板やネットなどを設置して人工的に抑制することにより気液界面を通しての輸送量を変化させるものである.これらの研究実績の一部は,査読付き英文誌1報に掲載された.一方で,成果報告を予定していた国際会議は新型コロナウィルス(COVID19)の影響により中止となった.以上より,2021年度はCOVID19の影響を多分に受けたものの,研究は概ね想定通りに進展した.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には,高速気流により生成される超高密度気泡層を通しての熱輸送機構を明らかにするために,兵庫県立大学・九州大学・近畿大学に設置されている大小3つの水槽を用いた3つの実験研究を引き続き実施する予定である.研究1および3における気泡層実験では,あらかじめ水槽内にごく微量のTriton-Xなどの界面活性剤を混入し,混合することにより,界面に厚さ数cm程度の気泡層を形成させる.その後,研究1では水面の平均勾配を形成し気泡層に液側由来のせん断力をかける.研究3ではファンを用いて風波水槽内に風を流入させ,気泡層にせん断力をかける.風速は,水面波の発生しない風速5m/s以下とする.研究2では界面活性剤を使用せず,高風速で自然と発声する気泡層を利用する.このように事前に気液界面に気泡層を形成させ,過去に開発した運動量収支法・熱収支法・プロファイル法を用い熱および運動量輸送量を測定する.測定された熱・運動量輸送量は,京都大学やロシア人共同研究者が所有する実験水槽における値などとの比較解析を行う.また,実際に気相と液相の中間の特性を持つ第三層として気泡層を設定し,気泡層を有する混相乱流場を対象に数値計算研究をも試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には,複数回の九州大学への国内出張を計画していたが,新型コロナウィルス感染症(COVID19)の影響により国内出張は計画の3分の1程度しか行えなかった.このため,国内出張費40万円を使用しなかった.また,出張先の風波水槽実験のために必要となる消耗品費50万円を使用しなかった.さらに,兵庫県立大学における小型水槽実験においては年度途中で新規のより大型の水槽作製の必要が出たため,本計画変更に伴う消耗品費20万円を使用しなかった.以上より,合計約110万円を次年度へと繰り越しを行うこととした.本繰越金は,次年度に国内出張費・実験消耗品購入費・論文印刷費の支払い等に充てる予定である.
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