台風など熱帯低気圧下における高速気流場の海表面近傍は,液滴の飛散や気泡の巻き込みなどの激しい砕波を伴う複雑な気液二相乱流場を呈し,特に海表面は,気泡同士が連続的にくっついて層を成す,いわゆる気泡層に完全に覆われることが報告されている.また,このような気泡層を伴う気液界面を通しての伝熱現象は自然界や工業装置内でしばしば見受けられる.そこで本研究では,高速気流による超高密度気泡層の生成機構・気泡層を通しての熱輸送機構を解明することを目的とする.2023年度は主に,(1)多数の気泡を含む風波乱流場における熱輸送機構の検討,(2)九州大学応用力学研究所の大型風波水槽における気泡量測定実験,を行った.水面を伴う乱流場を計算するために混相流計算法の1つであるVOF法を使用した.水面形状の高精度な追跡のために,PLIC法を用いた.渦相関法により,水面波の水面を通しての運動量・熱輸送量の推定を実施した.その結果,気泡が水面波の水面に衝突し破砕する際に気流の発達を抑制し,気泡層が気液間運動量・熱輸送に影響を及ぼすことを確認した.(2)九州大学応用力学研究所の大型風波水槽において,人工的に気泡層濃度を濃くする実験を実施した.波高および気泡層濃度の測定がされた.その結果,濃度を変化させることに成功し,さらに気泡層濃度が濃い場合に波高の発達が抑制される傾向を観察した.これらの研究実績の一部は,国際会議および国内学会において報告された.
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