研究課題/領域番号 |
21K03887
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
谷野 忠和 久留米工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (70352367)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 自然エネルギー / 風力エネルギー / 垂直軸風車 / 中・小規模風力発電 |
研究実績の概要 |
本課題は,同軸上に2つの異なる作動原理の羽根車,それぞれ外側に揚力型羽根車,内側に抗力型羽根車を互いに反転させて組み合わせるハイブリッド垂直軸風車を提案し,その可能性について,実験および数値解析による検討を行うものである。 2年目までの実験的検討の計画は,供試風車模型および出力性能試験装置の設計・製作であるが,課題は,揚力型および抗力型羽根車双方を同軸上に互いに反転させる構造で,各羽根車を独立して回転数制御して,トルク・回転数計測が可能な供試模型の製作,出力性能試験装置の構築である。昨年度までに,3Dプリンタの利点を駆使してこれらの課題を解決する供試風車および出力性能試験装置を製作した。さらに,本供試風車を用いた出力性能試験も実施した。性能試験では,直径の異なる2種類の内側羽根車,外側羽根車は2通りの翼取付角,これらを種々組み合わせた実験を実施し性能評価を行った.加えて,最終年度に計画していた外側羽根車の起動特性試験についても改良した供試風車を製作して実験まで行い,内側羽根車の有無の比較を行った。 数値解析による検討の計画は,2つの羽根車を有するハイブリッド風車の流れ解析が実施可能な環境整備と,解析による各羽根車の流れ場と性能との関係の把握である。これまでに,汎用計算機(2台)を追加導入し,複数の回転領域を有する数値流体解析(CFD)が可能な解析環境の構築,すなわち,本研究で用いているCFDソフトウェアOpenFOAM をVer.1.6からVer.4.1に更新し,初年度までに実験の供試風車を解析モデルとした解析ができることを確認し,2年目以降,予備検討で明らかとなった外側揚力型羽根車の実験との出力性能差の改善検討および,実験と同じ種々の条件での解析を実施中である。実験との出力性能の食い違いはメッシュなどの再検討で,やや改善されたがまだ十分ではなく継続して検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験的検討において,申請段階で困難を想定した点は,外側に揚力型風車羽根車,内側に抗力型風車羽根車を組み合わせた供試風車の製作である。これら2つの羽根車の回転軸は同軸線上にあり,各々が独立した異なる回転数で互いに反転して作動する構造である。そのため,供試風車の羽根車内には2つの回転軸があり羽根車両端から突出する回転軸はそれぞれ異なり,一方は外側羽根車のみ,もう一方は内側羽根車のみに接続される。したがって,各羽根車の一端は自身を回転させる軸に,もう一端は軸受けを介して他方の羽根車の回転軸に支持される。これらを満足させる複雑な構造であるため,供試風車模型の製作に,かなりの試行錯誤,試作数を想定したが,3Dプリンタの活用により,初年度の時点で供試風車のプロトタイプまで製作でき,出力性能試験が実施でき実験の課題抽出まで行うことができた。2年目はそれらを踏まえ供試風車模型の改良,さらには外側羽根車の起動特性試験までを実施できた。ただし,出力性能試験については,供試風車が小さく複雑な構造のため再現性にやや課題を残している。 一方の数値解析においても,これまで経験のある単独羽根車の風車と異なり,複数の羽根車を有する風車のため,現有の解析環境は対応できず解析ソフトウェアの更新を要し,加えてオープンソースソフトウェアのため更新による解析方法の習熟にある程度の期間を想定したが初年度中に解析の目処が付いた。2年目は解析精度の改善および種々の条件での解析が実施でき,ほぼ当初の計画通りである。なお,解析精度の改善について,解析結果は定性的な傾向を捉えているが,実験と解析の各出力性能を比較すると,外側揚力型羽根車の性能に明らかな違いがある。実験方法を含め原因を検討した。解析ではメッシュなどを再検討し,ある程度改善したが十分とは言えず検討を継続しているが,研究全体としてはおおむね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況でも述べた通り,提案する揚・抗力型ハイブリッド垂直軸風車の供試風車模型と,それを用いた出力性能試験装置の設計・製作および,供 試風車模型を解析モデルとした2つの羽根車を有するハイブリッド風車の数値解析のための解析環境の構築については,先の2年間での計画としていたが,初年度内にて,実験・解析環境ともほぼ構築できた。ただし,進捗状況等に述べた通り,実験では,小規模で複雑な構造の供試模型のため実験の再現性という点にやや課題があり,数値解析については,外側揚力型羽根車の出力性能の定量的な評価まで至っていない点に課題があるため,2年目は,これらの課題について供試モデルの改良,解析設定の見直しなどの対策を検討した。まだ十分ではないが,それぞれある程度の改善が図られた。特に出力性能試験(実験)については,構造が複雑となる供試風車の軸周りの構造の改善を行ったが,さらなる測定データの精度改善のため,次年度は,供試風車模型のスケールアップによる改善を試みる。すなわち,スケールアップした供試風車を製作し,その効果を実験で確認する計画である。これと同時に,数値解析についても,スケールアップした供試風車と同じサイズの解析モデルによる解析を実施し,これまでに引き続き解析設定についても検討を行う。以上の検討後,供試する揚・抗力型ハイブリッド垂直軸風車について,2つの羽根車の任意の作動条件での出力性能の把握・評価および,流れ場による考察し研究成果を纏める計画である。また,当初計画した外側揚力型風車の起動特性の把握については,内側抗力型羽根車の有無による影響を調べるための実験まで行えていることから,新たな検討として,煙線による可視化実験のための供試風車および煙線発生装置等の製作に昨年度から着手しており,最終年度も継続して行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況は,現在までの進捗状況でも述べた通り,おおむね順調に進展している。その中で次年度使用額が生じた理由について,まず第1の理由は,予算計上した旅費が使われなかったことである。コロナ禍の影響により研究発表で参加した学会講演会がオンライン開催となったためである。 その他の理由は,提案する揚・抗力型ハイブリッド供試風車模型の製作費である。本申請では,研究概要にも述べた通り,2つの羽根車を有する供試風車模型の出力性能を把握するための実験装置を新たに設計・製作する必要があり,特に,2つの羽根車それぞれのトルク・回転数が計測できる構造の供試風車模型の製作には,かなりの試行錯誤を想定し,予算申請時に,十分な試作製作費を申請した。しかし,供試風車模型の製作が3Dプリンタのエラーも少なく思いのほか少ない試作数で済んだ。加えて,羽根車2つ分のトルク・回転計を予算計上したが,本研究を優先し,他研究で使用のトルク・回転計1セットの共用化を図り実施できた。これらの理由により,係る費用を抑えられたことが,次年度使用額が生じた理由である。 当初申請額の使用については,ほぼ申請通りを予定している。なお,繰り越し相当額(約79万円)については,今後の推進方策に述べた新たに検討する可視化実験のための実験・解析装置の製作や,出力性能試験の再現性など既知の課題検討のための供試模型製作費等に充当する計画である。
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