研究課題/領域番号 |
21K03890
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柴田 元 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70613785)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 燃料改質 / ピストン圧縮 / ディーゼルエンジン / 改質ガス / 水素 / 一酸化炭素 / 化学動力学計算 |
研究実績の概要 |
ディーゼルエンジンのピストン圧縮によりノルマルヘプタンを低級炭化水素に改質する研究を実施した。化学動力学計算ソフトCHEMKIN Proによる燃料改質計算により燃料改質には当量比と改質時の最高到達温度が関係していることが明らかとなった。当量比1.5以下では燃料改質は起こらないが、当量比2.0-4.0で水素と一酸化炭素が、当量比5.0以上でメタンとエチレンの収率が大きい。また、改質時の筒内最高温度が高いほど改質ガス(一酸化炭素、水素、メタン、エチレン)の収量が多くなり、この結果はエンジン実験結果と一致した。酸素濃度が10%を超えると燃焼時の最大圧力上昇率とすすの生成が課題であり、酸素濃度6%以上10%以下の超過濃混合気のピストン圧縮改質が適している。燃焼室形状を変更してピストン圧縮改質実験を実施したが、改質温度レンジが変わるものの改質の傾向は変わらない。改質反応時間は十分に早く、1200rpm以下ではエンジン回転数の影響を受けなかった。また、燃料揮発性の影響も受け、軽油よりも沸点の低いノルマルヘプタンの方が改質ガスの収量が多い。このため、軽質なナフサを用いた実験を実施した。ナフサはノルマルヘプタンと同様の改質効率を示したが、粘着性のすすの生成が抑制され、燃料としてエンジンのロバスト性が高い。 さらに、CHEMKIN Proを用いて改質ガス生成量について反応面から能動的な収率制御の可能性を調べた。計算の結果、エチレンやメタンは炭化水素の初期の分解で生成され関与する素反応は限られているため、反応による生成量の能動的制御の可能性がある。一方、水素や一酸化炭素の生成にはいくつもの素反応プロセスがあり、例え改質反応に深く関与していそうな素反応を止めても、別の素反応を介して生成する。このことから、水素や一酸化炭素の生成量を反応面から能動的に収率制御することは難しいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学動力学計算とエンジン実験を併用しており、計算結果を実験結果で検証しながら進めている。研究の進捗自体は順調であり、燃料のピストン圧縮改質に関係している因子を明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、水素や一酸化炭素の収率は改質時の筒内最高温度と当量比で一意的に決まってしまい、収量を能動的に変更するには、例えば、以下の二酸化炭素改質や水蒸気改質反応、水性ガス逆シフト反応のような改質反応に影響を与える仕掛けが必要であると考えられる。 CO2 + CH4 = 2H2 + 2CO(二酸化炭素改質反応)(1) CH4 + H2O = 3H2 + CO(水蒸気改質反応)(2) CO2 + H2 = CO + H2O(水性ガス逆シフト反応)(3) エンジンの排気中には二酸化炭素や水蒸気が含まれておりディーゼルエンジンでは排気再循環(EGR)により吸気に還流させて燃焼を抑制し排気中のNOxを低減する制御がある。過濃雰囲気条件でこのEGR還流量を変えれば、(1)式や(2)式で一酸化炭素と水素の同時生成が期待できる。また、(3)式により水蒸気と二酸化炭素の量次第で水素または一酸化炭素の生成が期待できる。また、2021年度は汎用エンジンを改造した実験用エンジンで研究を行ったが、将来の実用化を考えると最新のコモンレール式噴射装置を備えるディーゼルエンジンで実験した方が有効であると考えられる。このことからエンジン設備の変更をしたいと考えている。
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