研究実績の概要 |
日本は2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から46%削減することを目標に掲げている.日本が温室効果ガスの排出を大幅に削減するためには,産業分野の排熱の回収とその有効利用は不可避なテーマである.現在,蓄熱により低温未利用熱エネルギーを貯蔵・輸送して需要をマッチングさせるための様々な研究開発が進められている.このような状況下,Makuta et al.(Chem. Eng. Journal, 273, 192 (2015))はシェル材にシアノアクリレートを用いることでコア-シェル構造を有する蓄熱マイクロカプセルの開発を行い,過冷却による蓄放熱特性について報告した.その後,彼らはシリカ膜に覆われたエリスリトール蓄熱マイクロカプセルを開発した(Honda, A. et al., Experimental Mechanics, 21, 150 (2021)). まず初めに,幕田らの研究グループが開発したエリスリトール蓄熱マイクロカプセルをシリコーンオイルに分散させた分散液の放熱特性について検討した.この結果,シリコーンオイルに分散させたエリスリトール蓄熱マイクロカプセル分散液の過冷却解除による放熱に基づいた分散液の温度上昇が実験的に観察された.本測定(質量分率15%,過冷却解除条件:スターラーによる物理的刺激 900 rpm)において見積もられたコア材であるエリスリトールの放熱量は潜熱量の42.5%であることがわかった. 次に,幕田らの研究グループが開発したエリスリトール蓄熱マイクロカプセルをシリコーンオイルに分散させた分散液の有効粘度を音叉振動式粘度計を用いて測定した.この結果,エリスリトール蓄熱マイクロカプセル分散液において測定された平均有効粘度は198.63 mPa・sであることがわかった.この値は25℃シリコーンオイルの粘度の約2.1倍であった.
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