• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

周囲液滴の存在により誘起される液滴内対流非対称化の物理解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K03898
研究機関岡山大学

研究代表者

山田 寛  岡山大学, 自然科学学域, 講師 (60758481)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード液滴蒸発 / 赤外線カメラ / 液滴内部対流
研究実績の概要

本研究は,近接液滴の蒸発時に見られる液滴内部対流を詳細に把握することを目標としている.令和3年度は,撥水基板上に置かれた近接する2液滴内部の対流の可視化や液滴表面温度の赤外線カメラでの観察,熱伝導率の異なる固体面を用いた蒸発挙動および液滴内部対流の評価などを行った.
2液滴内部の対流の可視化には粒子画像流速測定法(PIV)を用い,近接側三相界線から気液界面に沿って遠方側三相界線に至る流れが生じることを確認し,液滴中心間距離を初期液滴直径の3.5倍程度まで広げた場合には1液滴と同様な自然対流由来の流れが見られることを確認した.2液滴蒸発時の表面温度測定では,温度分布が液滴内で左右対称にはならず,低温部分が遠方側に偏ることを確認した.これは,蒸発による潜熱輸送と固体面からの熱伝導によって液滴頂点で温度が低下することおよび近接側で蒸発が抑制されることによって遠方側と比較して蒸発潜熱が奪われないためだと考えられる.また,この結果は蒸気拡散,蒸発潜熱および気液相内熱伝導を考慮した数値解析結果とおおよそ一致することを確認した.
熱伝導率の異なる基板上での実験では,シリコン基板に加えて熱伝導率が1~2桁低いフッ化カルシウムおよびフッ化マグネシウム基板を使用した.基盤の熱伝導率が低下することで蒸発完了までにかかる時間が長時間化することを確認し,液滴内の対流が抑制されることが明らかとなった.
加えて,液滴群中にある液滴の蒸発を模擬するため,液滴周囲を壁で囲った状態での蒸発実験を行った.1方向のみに壁面を設置した場合,2滴と同様な対流が液滴内に生成されることを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度は,近接する2液滴内部対流の可視化や液滴表面温度の観察,熱伝導率の異なる固体面を用いた蒸発の評価などを行った.
液滴表面温度の観察は赤外線カメラを用いて行った.1液滴における評価では,接触角が大きくなるほど液滴頂点部分の温度が低下することが確認され,これは従来の研究結果と良い一致をみている.2液滴による評価では,液滴中心間距離を直径の1.5倍程度にした場合,最も温度が低くなる部分が液滴の隣接していない側に見られることを確認した.また,同様な状況における液滴の温度分布は蒸気拡散や蒸発潜熱,気液相内熱伝導を考慮した解析によっても評価され,実験と同様な傾向が得られることを確認した.
熱伝導率の異なる固体面上での蒸発では3種類の基板を用いて実験を行った.その結果,熱伝導率が低下することで液滴内部の自然対流が抑制されることがわかった.これは蒸発潜熱によって奪われる熱量が固体面を通して供給されなくなったため,液滴内部での温度差がつかなくなったためと考えられる.
また,液滴群中にある液滴の蒸発を模擬した実験では,1方向のみに壁面を設置した場合に2滴と同様な対流が液滴内に生成されることを確認し,4方向を壁面で囲った場合には蒸発が抑制され,対流の速度が大幅に低下すること確認した.

今後の研究の推進方策

引き続き同種の2液滴蒸発時の挙動について,内部対流および温度分布の観察・解析を通じて,その物理の解明を目指す.加えて,異種の液滴が近接して存在する場合について実験的に研究を進める.これまでの実験では,固体面を超撥水面とし,同量の水滴とアセトンを近接させて滴下した場合,水滴が左右に振動する現象が確認されている.現在のところ,アセトンの蒸気が水滴表面に吸着,溶解することによって溶媒と近接する側の表面張力が低下することで水滴内部に力の不均衡が生じたためと考えられるが,液滴内部の対流や温度分布の可視化,他の溶媒を用いた実験を通して,振動する物理機構や発生条件などの詳細解明を目指す.

次年度使用額が生じた理由

計画通り赤外線カメラは購入できたが,コロナウイルス感染症の蔓延のため対面で実施される学会がなく,旅費として使用されなかったため.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 近接する2液滴周囲の水蒸気濃度が蒸発に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      山田寛,宮下翼,磯部和真,堀部明彦
    • 学会等名
      第58回日本伝熱シンポジウム
  • [備考] 岡山大学工学部伝熱工学研究室HP

    • URL

      https://www.cc.okayama-u.ac.jp/heat_transfer/heattransferlab/research.html

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi