燃料噴霧の自着火の基礎研究として,空間・時間分解能を確保するためにこれまで直径1mm程度の粗大液滴が実験対象とされてきた.また,液滴間干渉の影響の調査対象として同一径の液滴群が扱われてきた.しかしながら,実際の噴霧は直径10~100ミクロン程度の粒形分布を持つ微小液滴の群である.よって,①粗大ではなく微小液滴の自着火特性の実験的確認,②液滴群の自着火における液滴間干渉に液滴径の分散が及ぼす影響の調査,を本研究では行う.①について,昨年度に続き,高温空気中における微小液滴の蒸発実験を行うとともに,実験装置の改良に注力した.すなわち,室温から高温へのなるべくステップワイズな温度上昇と,高温部の温度変化の低減である.後者では,温度変化を5K以内に抑えることに成功した.一方,窒素中の蒸発実験を主とし,空気中の燃焼実験はあまり行えなかった.燃焼実験については引き続き次年度にデータ蓄積を行う.②については前年度に径の異なる複数粗大液滴の自着火実験を行い,これまで,冷炎もしくは熱炎による最初の熱発生までは,液滴間干渉は自着火を抑制する方向にのみ働くことが観測されていたが,熱炎発生限界近傍の雰囲気温度で実験を行った結果,液滴間干渉が自着火を促進する方向に働くことを確認している.これらの液滴間干渉の傾向について,本年度は2次元数値計算において局所ダムケラ―数を用いた解析を行うことにより説明を行った.また,昨年度に続き,粗大液滴の自着火への酸素濃度の影響について,広い温度・圧力領域において系統的に実験的に調査した.
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