研究課題/領域番号 |
21K03902
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
野原 徹雄 東海大学, 総合科学技術研究所, 研究員 (40718186)
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研究分担者 |
落合 成行 東海大学, 工学部, 教授 (40407995)
高橋 俊 東海大学, 工学部, 准教授 (60553930)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | NOx/CO2低減・吸収・回収 / 尿素SCRシステム / 表面微細加工 / 気液二相混相流 / 高速可視化 / PIV-DDM+データ同化 / 液滴微粒化・気化 / ライデンフロスト現象 |
研究実績の概要 |
本研究ではe-fuel(カーボンニュートラル合成燃料)や水素燃料を使用したとしても様々な内燃機関から排出されるNOxやCO2の低減・吸収・回収するための新たな開発を目的としている. 今年度はNOxやCO2の還元・吸収溶剤である尿素水溶液やMEA(モノエタノールアミン)水溶液を管内の流れ場にて低エネルギーで微粒化・気化させるための手法を検討した. まず, 噴霧した還元・吸収溶剤について,ガス温度違いの流れ場での挙動を側面および垂直方向による可視化可能な実験方法について車両を模擬した可視化実験装置にて確立し,管内液滴分布や速度,粒子数を検証した.またそれらの実験結果を数値化させるためにPIV-DDM(粒子画像流速測定 +離散液滴法)+AI+データ同化解析にて液滴挙動の再現も実施した. 次に噴霧液滴を衝突させるプレートに新たに創生した表面微細構造を施した後,微粒化・気化の促進可能性を検証した.実際の車両相当条件を模擬可能なSCRシミュレータ内へ新たな表面微細構造を施した衝突プレートを設置し噴霧液滴を衝突させ, 可視化耐熱ガラス管内でのガス流内での気液混相流内の微粒化・気化挙動やCO2吸収量を確認した. 排ガス中のCO2濃度を模擬したガス流れ中にMEA水溶液を噴霧した場合,衝突プレートなし→衝突プレートあり→衝突プレートあり+表面微細構造付き,とCO2吸収率が増加する傾向となった.これらの結果からNOxやCO2の還元・吸収には衝突による微粒化や気化が有効であると共に,その衝突面を表面微細加工による衝突瞬間時の液滴微粒化や気化を更に向上可能になる事を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面微細構造の最適形状について,初年度はライデンフロスト現象が顕著に発生する270℃付近での微粒化に注力していたが,実際の車両で課題となっている二相混相内でのガス温度150~200℃での可視化手法を確立し,その結果をPIV-DDM+AI+データ同化により数値化する事を可能にした. また,それらの温度域でも微粒化・気化が促進可能な表面微細加工を新たに創生し,その新しい表面微細加工を施した衝突プレートによる可視化実験・手法も新たに構築した.具体的にはディンプル形状の内部に更なる形状を施し,車両を模擬した可視化実験装置(SCRシミュレータ)の流れ場に衝突プレートを設置した状態にて液滴衝突させた際の微粒化度合いの観察に成功した.この結果から気液二相混相状態では衝突プレート上への最適な表面微細加工により150℃~200℃での微粒化・気化が大きく促進する事も明らかにした. また,二年目に予定をしていた“液滴やガスに帯電する静電気力や, 電場アシストによる微粒化メカニズム解明”についてはエンジンルームや車体に帯電している静電気力や静電気発生要因やプロセスについての調査・実験方法の検討を主とした.具体的には車両での帯電上限量や放電プロセス, 除電方法について実験室で再現するための実験手法,そして液滴微粒化・気化に最適な表面微細加工を施した衝突プレートの電荷手法の検討まで進めている. 更に最終年度に予定していた“CO2吸収・回収手法の確立”について実際にSCRシミュレータ内にCO2ガス濃度を2~7%濃度に調整したガスを流し, MEA水溶液を10~20wt%の範囲で表面微細加工を施した衝突プレートに噴霧した実験では最大0.15%の低減を確認し,実際に微粒化手法によるCO2吸収可能性を示唆する事が出来た. これらの進捗事から,全体的にはおおむね研究は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(2023年度)はまず,追加エネルギーがない状態で尿素水/CO2吸収液を衝突させる最適条件を検討する.微粒化・気化が最適になる表面微細構造を施した後, SCRシミュレータ内へ設置し,ガス温度が150~200℃になる実際の車両相当条件で噴霧衝突させ,ガス流内での気液混相流内の微粒化度合いやCO2吸収量を可視化確認する.またその可視化結果を更なる高精度化を施したPIV-DDM+データ同化による解析手法で数値化する. 次にその最適表面微細構造プレートに静電気力や電場アシストを利用した低エネルギー追加による超微粒化度合いやCO2吸収量の変化を可視化実験により確認する.CO2吸収用のMAE水溶液の濃度やガス温度/流量の違いによる最適微粒化とCO2吸収量の相関を導く. 更にCO2を吸収後のMAE水溶液の回収機構のデザインや材質・形状を検討し,実験にてCO2回収可能性について実施しシステム最適設計へ導く.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度から続く原材料不足による実験機器・装置メーカーの製品納期が大幅に遅れており、実験に必要な部品や装置の発注がまだ出来ていないため。 メーカーからの情報ではまもなく入手可能との事で最終年度中には発注および納入可能の予定。
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