本研究では高集積半導体の冷却を目的として、マイクロ流路ネットワーク蒸発デバイスの開発、および要素技術として微細構造を導入した高機能伝熱面開発と高時空間分解能での沸騰熱伝達率分布の可視化技術開発を行った。微細構造としてはバイオミメティクスに基づくナノ・マイクロ階層構造表面を新規に開発してjumping dropletによる凝縮促進を確認した。さらに、最終年度にはマイクロ構造の微細化により液滴径10μm以下のjumping dropletが高頻度に発現する条件を見出した。沸騰熱伝達率分布の可視化では、蛍光体と高分子の組み合わせを探索し、蛍光体PtTFPPと高分子PMMAのTSP層を1~3μmの薄膜状に形成させることで、30.0~76.6℃の温度条件下で-0.50%/Kの温度感度で再現性の高い測定が可能であることが示された。高さ4mm、幅10mmの矩形流路を用いて、試験流体HFE-7000での強制流動沸騰実験においてTSP付き伝熱面による可視化計測を行い、時間分解能2000Hz以上、空間分解能64μm、温度測定精度±3.1℃を得た。沸騰気泡底部の温度変化を可視化した結果、気泡中心部に発生するドライパッチによる熱伝達率の低下を定量的に評価することができた。また、気泡挙動観察から確認された気泡流速に追従して、核生成気泡近傍の温度分布が移動することが確認され、高熱流束での激しい沸騰現象の温度分布変化に対して十分高い速度での可視化が可能であることが示された。これらの微細加工技術を応用したマイクロ流路ネットワーク蒸発デバイスを試作し、HFE-7000を作動流体とした冷却実験を実施した。面積1cm^2の発熱体を熱的に接触させて発熱密度15W/cm^2で加熱した条件でも安定した沸騰冷却を行えることが確認された。
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