研究課題/領域番号 |
21K03907
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
研究代表者 |
山田 俊輔 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 准教授 (90516220)
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研究分担者 |
船見 祐揮 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 講師 (70738004)
中村 元 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 教授 (80531996)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ステレオPIV / 高速赤外線カメラ / バックステップ流れ / コヒーレント構造 / 非定常熱流動場 |
研究実績の概要 |
これまでの研究より,バックステップ流れにおける再付着点付近の流れの変動成分と熱伝達率には相関があると報告されているが,どのような流れの変動が熱伝達率に影響を与えるのかといった詳細な熱伝達メカニズムまでは解明されていない.令和3年度では,半無限固体の熱伝達を仮定した温度分布モデルから熱伝達率を予測する.このモデルの検証として,ステレオPIVを用いて,2次元かつ時間平均的な速度変動情報から半無限固体モデルの特性時間から2次元的な熱伝達率分布を推定する.この推定値と,高速赤外カメラで計測した時間平均な熱伝達率の実験値を比較し,どのような流れの変動が熱伝達率に影響を与えるか調査した.研究の第1段階として,実験装置の拡大比を従来のものから変更し,再付着点付近の速度と熱伝達率の計測値と数値解析(DNS,LES)の文献値と比較し,計測値の妥当性を検証した.一定の精度が得られた実験データを用いて,温度から熱伝達率を算出した.また,実験において十分な時間・空間分解能を得るため,測定面には熱容量が小さくかつ熱伝導の低いチタン箔を使用し,新たに加熱模型を製作した. 先行研究を参考に,壁付近の流れ方向の乱れ度から半無限固体モデルで用いる特性時間を算出し,熱伝達率を推定した.推定値と実験値の熱伝達率のオーダーの違いはないが,再付着点付近の分布傾向は異なり,モデルを再検証する必要があった.流れ方向と高さ方向の変動速度相関が高くなる時のそれぞれの速度変動データから,流れ方向と高さ方向の平均的な特性時間を算出し,熱伝達率を推定した.再付着点下流域では,推定値と実験値は同程度であり,再付着点上流部での差異が大きかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響による半導体不足により,当初予定していたガルバスキャナの納品に1年かかることが判明し,研究の計画を大幅に変更した.モデル構築を令和3年度に実施し,令和4年度からスキャニングステレオPIV装置の構築と計測精度検証に着手する.実施予定していた2次元熱伝達モデルの検証から,速度情報から熱伝達推定できる可能性が高いことをわかり,このまま研究を進展・発展させる.当初の計画とは変更を余儀なくされたが,研究進度には大きな問題はない.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度以降では,3次元的な非定常熱伝達率変動を推定するためには,非定常な速度変動の空間計測が必須となる.これまでに構築した2次元ステレオPIV計測システムでは,熱伝達率の予測に必要な空間的な情報量が不十分であった.そこで,3次元計測システムへと拡張するため,高速ガルバノスキャナを利用する.この高速ガルバノスキャナは最大4kHzで走査することが可能である.カメラは二重露光,1kHzで撮影し,ガルバノスキャナは300μsで整定させる.この整定時間内に,ダブルパルスレーザを照射し,PIVのペア画像を取得する.これを繰り返し,レーザは1.5mm間隔でスキャンし,20mm×20mm×20mmの空間計測により非定常な3次元渦構造を可視化する. 熱伝達モデルの推定では,複数の渦が存在する3次元的なモデルへと拡張する.複数の渦が存在する場合,渦の伸縮に伴う移流の影響を受けた誘起速度を,渦の伸縮と粘性による拡散の影響を考慮した移流速度から運動量輸送時間スケールを算出し,3次元流れ場の非定常な熱伝達率の推定値を計算する.これらの推測結果の妥当性を評価し,流体による運動量輸送と熱輸送に関するアナロジーを検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ガルバノスキャナの納期が1年かかるため,実験計画を大幅に変更したことにより,予定していた物品購入を先送りした.また,参加を予定していた学会が新型コロナの影響による中止や,オンラインによる開催等の変更により,旅費,その他の費用を変更せざるおえなかった.
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