研究課題/領域番号 |
21K03910
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
末永 陽介 岩手大学, 理工学部, 准教授 (60413720)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 燃焼 / 成層燃焼 / 可燃限界 / 火炎伝播 / 消炎 |
研究実績の概要 |
自動車用エンジン等の燃焼器の低燃費化とCO2の排出抑制には,燃焼室内における緻密な燃料濃度分布の制御が鍵となる.本研究課題の目的は,ガソリンエンジン内の燃料濃度分布の非定常変化に対する予混合火炎の応答特性を理解することである.令和3年度は,濃度変動を与えた火炎の希薄可燃限界の拡大と新たな消炎現象について,その現象解明の基盤となる知見を得た.今年度は,希薄メタン/空気火炎を対象とし,燃料濃度(当量比)の変動振幅φa(=0.05),平均当量比φm(=0.85,0.8),変動周波数f(=5~50 Hz)をパラメータとして実験を行った.加えて,次年度実施予定であった希薄プロパン/空気火炎を対象とした実験(φa=0.05,φm=0.8,f=5~50 Hz)を行った.その結果,次の二つのことが明らかとなった.(1)希薄メタン/空気火炎の燃焼速度とCHラジカル発光強度(∝発熱速度)の周波数特性は類似しているが,希薄プロパン/空気火炎のこれらの周波数特性は異なることが明らかとなった.(2)各燃料において,濃度を変動させない場合の火炎(静的火炎)の燃焼速度(∝反応速度)がほぼ同じ値となる当量比をφmとして実験を行った時,火炎直前の未燃ガスの速度勾配(=火炎伸長率)に起因するルイス数効果が,燃焼特性に影響することが明らかとなった.すなわち,希薄メタン火炎の場合,燃焼速度とCHラジカルの発光強度の最大値は,同じ当量比の変化域における静的火炎のそれぞれの最大値よりも大きくなる周波数が出現するが,希薄プロパン/空気火炎の場合,ルイス数効果のために,CHラジカルの発光強度の最大値が,希薄メタン/空気火炎のように,静的火炎のその最大値を超えることは無く,30Hzを超えるとCHラジカルの時間平均値は周波数に対して低下することが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,実施予定であった燃料濃度の変動に対する希薄メタン/空気火炎の応答特性に加え,次年度実施予定であった希薄プロパン/空気火炎の応答特性について調査することができ,今後の濃度変動火炎の消炎現象の発生メカニズムを検討する上で重要な知見を得ることができた.今年度に得られた知見について,令和4年度に開催される学会において発表することを検討している.今年度,研究成果を発表することはできなかったが,次年度の実験パラメータについて調査できた点を考慮すると,おおむね順調に研究を進めることができたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
濃度変動火炎の消炎現象の発生メカニズムを検討する上で必要な知見は,前倒しして調査することができた.今後は,当量比の変動振幅を増幅させて,実際に火炎を消炎させる実験を行う.実験を行うにあたり周波数によらず,当量比の増幅率を揃えることが,消炎現象のメカニズムを理解する上で必要となることから,予備実験を入念に行うことにより,各周波数における増幅率と,当量比の変動振幅を増幅させるために利用しているスピーカーの印可電圧値を決定し,本実験を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
火炎を周囲空気から隔離するための窒素ガスを節約して利用したため,その分節約ができ,6,555円の差額がでた.この差額は,次年度の窒素ガスやトレーサ粒子の購入に充てる予定です.
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