研究課題/領域番号 |
21K03911
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 秀之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40241533)
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研究分担者 |
松川 嘉也 東北大学, 工学研究科, 助教 (30882477)
松下 洋介 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (80431534)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | DAEM / Stefan-Maxwell式 / 大規模計算 |
研究実績の概要 |
2021年度は,(1)X線CTによる固体燃料の構造の再現と固体燃料モデルの構築,(2)固体燃料の’真’のガス化反応速度の測定と分布活性化エネルギーモデルによる定式化,(3) Stefan-Maxwell式に基づく多成分系における拡散の数値解析を実施した. (1) X線CTを用いて固体燃料を撮像し,Otsuの手法に基づき二値化することで基質および気孔を区別することで実際の固体燃料の構造を再現した固体燃料モデルを構築した. (2) 固体燃料を微粉化した異なる粒径の固体燃料の試料を対象にTGを用いてCO2およびH2Oガスによる重量変化を測定することで各ガス化反応速度を算出した.異なる粒径の固体燃料の試料の反応速度を比較することで,反応がグレインモデルで表現可能であることを明らかにした.反応速度を分布活性化エネルギーモデル(Distributed Activation Energy Model, DAEM)を用いて表現し,後述のガス化シミュレーションの個々の基質の反応速度を計算するための入力パラメータとした.なお,当初の予定にはなかったことであるが,従来のDAEMのモデルでは,表現できないような複数の活性化エネルギーのピークを持つデータに対して,機械学習を援用して入力パラメーターを定める手法を新たに提案・構築した.さらに,研究室オリジナルの反応に伴う固体燃料の塊の重量変化をオンラインで測定可能な反応を用いて固体燃料の塊を任意の反応率まで直接ガス化させ,後述の固体燃料モデルの解析結果と比較可能な試料を作製した. (3) 本研究で対象とする系においては,Fickの法則を拡張した拡散速度はStefan-Maxwell式に基づく厳密な拡散速度とほとんど変わらないことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
数値計算が大きなトラブルなく,進んだことに加え,当初の予定にはなかった新手法を提案することができた.
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今後の研究の推進方策 |
残る(4) 詳細化学反応機構に基づく水性ガス化反応速度の定式化,(5)固体燃料モデルの大規模ガス化反応速度解析を実施する. (4)気相では主に生じる水性ガス化反応(CO+H2O<=>CO2+H2)について,対象とする圧力,温度と組成のあらゆる範囲に適用可能な速度モデルを構築する.まずは,化学平衡に基づくモデルを試みる.化学平衡が仮定できない場合,あらかじめゼロ次元の完全混合槽型反応器を対象に詳細化学反応機構を用いて独自に総括反応速度式を導出するあるいは対象とするあらゆる圧力,温度と組成の範囲で用いることが可能なデータベースを構築し,目的の反応速度解析においてこのデータベースを参照することで水性ガス化反応速度を求める. (5) (1)で構築した固体燃料モデルを対象に基質は2.で定式化した反応速度式に従いガス化反応が生じ,反応が完了すると消失し,気孔になるとする.一方,基質以外の空間および気孔では各化学種について3.1で構築したS-M式に基づく拡散および3.2で定式化あるいはデータベースに従い水性ガス化反応が生じるとする.種々の条件においてガス化反応に伴う構造の経時変化を表現し,構造変化が反応モードの経時変化に及ぼす影響を検討する.まず,(2)で実施した測定結果と比較することで本解析の妥当性を確認する.次にCO2あるいはH2Oガス化反応のいずれかを考慮し,各ガス化反応が固体燃料の構造変化に及ぼす影響を検討する.さらにCO2およびH2Oガス化反応を考慮し,水性ガス化反応が生じないとする条件も検討することで,水性ガス化反応がCO2およびH2Oガス化反応に及ぼす影響およびCO2およびH2Oが共存する場合のガス化反応の生じる割合についても検討する. 以上の研究成果について,学会発表・論文投稿などを実施する.
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