研究課題/領域番号 |
21K03912
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
幕田 寿典 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (40451661)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 蓄熱 / マイクロカプセル / 糖アルコール / スラリー / エナジーハーベスティング / シリカ |
研究実績の概要 |
本研究では、有効活用されていない100~200℃の中低温排熱のエナジーハーベスティングに適した蓄熱マイクロカプセル及びそのスラリーの実用化に向け、コアとなる蓄熱カプセルの開発とスラリーとしての熱物性・蓄熱特性を明らかにして中低温排熱利用の画期的なプラットフォームとなりうる材料の創出を目指している。 初年度の研究では研究項目①「蓄熱マイクロカプセルの開発および最適化」の内容を中心とした研究を行い、潜熱蓄熱材として高い蓄熱量と118℃の融点を持つエリスリトール、膜材料に水と反応しシリカを形成するオルトケイ酸テトラエチルを用いたシリカ蓄熱マイクロカプセルの調整に成功した。この工程では、オイル中に溶融エリスリトールを微液滴として分散させ、さらに表面にアンモニア水を吸着させたのちに、オイルにオルトケイ酸テトラエチルを添加することにより、エリスリトール微粒子表面でゾルゲル反応が進行し、エリスリトール粒子表面にシリカ膜が形成したマイクロカプセルが生成する。 また、材料の他にもカプセルの調製工程に改良を施し、強い超音波振動を与えられる振幅拡大ホーンを用いることでエリスリトール微粒子を小径化し、シリカ蓄熱マイクロカプセルの平均直径が目標値の50μmを下回ることができた。先行研究でのポリマーシェル型の蓄熱カプセルで課題とされていた耐熱性についても、シリカを膜材料とすることで中低温排熱環境下での利用に耐えうる210℃まで引き上げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定していた研究として蓄熱カプセルの生成・最適化については数値目標を達成しており、順調に研究が進展している。また、熱物性については研究室で測定できる環境の整備も進んでおり、蓄熱特性についてもデータの取得を進めることができている。 また、本研究に関しては、3件の学会発表やその発表に関する2件の受賞(日本実験力学会2021年度講演会-優秀講演賞、第27回流動化・粒子プロセッシングシンポジウム-学生優秀発表賞)も受けており、対外的にも研究成果および有用性について認めて頂いている。
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今後の研究の推進方策 |
蓄熱カプセルの大きさや安定性を左右するパラメータについては、概ね明らかとなってきているため、今後さらに各パラメータおよびその組み合わせの最適値を探る。また、カプセル単体の力学特性や耐久性について明らかにすると共に、カプセル自体の蓄熱特性や、スラリーとしての蓄放熱特性についても検証を進める。また、糖アルコールだけでなく、二酸化バナジウムをはじめとする相変化材料をカプセルに内包させることで、カプセル径や蓄放熱特性を制御できることも明らかとなっているためそちらについても並行して研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していた学会発表が全てオンライン開催となったことなどの理由により、繰り越しが生じた。本年度は研究計画の予算使途に加え、高温環境下で使用で損耗が目立つ超音波ホーンなどの消耗品に本差額を充当する予定である。
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