研究課題/領域番号 |
21K03915
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
舩谷 俊平 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (50607588)
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研究分担者 |
坂間 清子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (70773539)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | LIF / 可視化計測 |
研究実績の概要 |
自動車において,エンジンの動力を伝達するために採用されているトランスミッションは,多くの歯車がかみ合うことによりエンジンからの出力を効率よく車輪に伝達しているため,歯車同士のかみ合いが非常に重要であり,適切に機能させるためにはミッションオイルという潤滑油が必要である.しかしながら,トランスミッションが機能する際,トランスミッションオイル内に気泡が発生することにより,トランスミッション内において発砲音が発生するという現象が生じることが報告されている.問題解決のためには気泡の発生原因を究明,及び気泡の生成消滅のメカニズムを調査する必要があり,トランスミッションオイルの特性を理解する必要がある.その一つの要素として温度に注目することとしたが,気泡温度の非接触温度計測手法が確立されていない.そこで本研究では,有色オイルへの利用が可能な温度分布計測システムの開発を目指した. 本研究の結果、以下の知見を得た.(1)Coumarin153を混入させたミッションオイルにおいて,蛍光強度比(G/R)と温度との間に依存性があることが分かった.(2)Coumarin153を混入させたオイル中にてレーザー光(励起光)の減衰が起きており,蛍光の分布に差が発生しているため,使用するレーザー及び蛍光体の見直しまたは取得データの補正法を再検討する必要がある.(3)温度分布の可視化については,G,R画像上での輝度の減衰及び蛍光強度比の変動による影響を強く受けているため,理想とは異なる結果となったが温度差の傾向や,温度ごとの蛍光強度比の違いによる計測領域の輪郭を取得することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Coumarin153を混入させたミッションオイルにおいて,蛍光強度比(G/R)と温度との間に依存性があることが判明したことで,温度計測技術を確立する見通しを得ることが出来た.一方で、気泡表面における光線の散乱現象により、計測領域サイズに制約があることが見込まれ,今後,この影響の対策に取り組む必要がある. また,感温蛍光体に関する基盤研究として,ルミシス蛍光体の温度依存性評価と,ルミシス蛍光体蛍光体を2種類使用したワイヤーによる2色LIF気流温度分布計測法を提案し,その温度計測精度を評価した.その結果,Lumisis蛍光体を用いた2色LIF温度分布計測において計測領域の温度分布を示すことができた.不確かさ解析により温度計測誤差を評価したところ,平均1.4℃程度と推定され,以前の研究から大幅に計測精度が向上した.誤差の要因はLumisis蛍光体ワイヤーの塗りムラによるものだと考えられることから,Lumisis蛍光体の自動塗布システムを構築することで温度計測誤差は相当低下することが期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,顕微鏡式温度・速度分布計測システムの開発に取り組むことになるが,2021年度の研究成果から明らかになった,気泡表面における光散乱の影響が顕微鏡計測においてどの程度の温度計測誤差に相当するかについて,予め評価試験を行う必要がある.加えて,高速度撮影に対応した撮影システムの構築ならびに気泡径計測システムの構築など,技術的ハードルの高い課題が多い.当年度の研究における技術的課題を順調に解決することで,2023年度に研究目標達成の実現性を高めることが出来ると考えられ,研究計画全体における2022年度の研究推進の役割は大きい. 2023年度は,気泡断熱圧縮現象の数値解析と比較評価を行う予定である.気泡断熱圧縮現象の数値解析は,既報と同一条件にて行い,液相部の気泡径,界面位置(界面形状)の時間変化,温度分布,速度分布を実験結果と比較することで妥当性を検証するとともに,必要に応じて解析条件を実験に合わせ修正する.この数値解析条件をもとに,実験では評価困難な気泡内の温度分布,ラッカー部,酸化膜の形成,ホットスポット内の加熱について評価し,酸化機構の抑制機構について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度に購入した消耗品に値引きがあった。一方、次年度に購入予定の消耗品の一部が、原材料生産地における紛争に伴い値上がりした。そのため、消耗品購入額の一部を次年度使用に変更した。
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