研究課題/領域番号 |
21K03923
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
原村 嘉彦 神奈川大学, 工学部, 教授 (80175546)
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研究分担者 |
諸隈 崇幸 神奈川大学, 工学部, 助教 (00756059)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 限界熱流束 / 熱流束分布 / 熱流束変動 / 熱伝導逆問題 / マクロ液膜 |
研究実績の概要 |
沸騰限界熱流束の発生機構に関連して,熱流束分布の変化の測定を伝熱面に接して存在する液の挙動観察と同時に行うことを目指している.2021年度は,限界熱流束点より少し温度の高い状況を実現することを目指した.観察や測定を容易にするために,申請時の5つ割り伝熱面ではなく,共通な底部を持つ内外の2つに分けた外径11.6mmの伝熱面(以下,二重伝熱面と呼ぶ)で前記の状態の実現を試みた.また年度の終盤には,熱流分布とその変化を測定するための伝熱面の作成に着手した. 二重伝熱面は,全体の底部と中心部を一体に削り出した銅ブロックに,周囲部の中空円柱を銀箔を挟んで真空中で加熱して接合する.先ず,その実現性を確認した.手順を工夫することで(詳細は進捗状況で説明)満足する接合状態と表面状態を実現した. 最初の伝熱面は中心部の径を7.5mmとした.周囲部の90°間隔と中心部で沸騰曲線を測定した.中心部が従来言われている程度の熱流束で遷移沸騰に移行し,周囲部はその後もしばらく熱流束が上がり続ける特性を得た.また中心が遷移したあとの周囲部の伝熱特性は,それ以前の延長線より熱流束が低い結果を示した.遷移沸騰を定常状態に維持することはできなかったが,共通底部の二重伝熱面で遷移沸騰を定常に実現する条件を導出し,安定限界は,中心部直径が7.5mmのとき-66kW/m2Kと小さいが6mmでは-90kW/m2より急な勾配にも対応できることを示した. 沸騰状況の観察は,50,000fps程度とかなり高速で撮影するれば可能なことを確認した. 中心部径を5.8mmとした伝熱面も作成して伝熱特性を測定したが,製作に欠陥があり(詳細は進捗状況で説明)ジャーナル論文にする結果は得られていない.しかし,遷移沸騰を定常的に実現することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二重伝熱面の作成のノウハウを確立した.当初は単純に真空中で加熱し接合する方法をとったが,接合性を向上するために最終の真空引き直前にブロック温度250°Cで水素を導入することとした.また,0.1mm程度の狭い空隙に削りかすが挟まる懸念があったが,ワイヤーカット放電加工で極めて良好な伝熱面表面を作り出せることも見いだした. 遷移沸騰におけるかなり急な沸騰曲線の負の勾配にも対応可能な伝熱面を製作できることがわかった.ただ,未だ中心部径が6mm程度の伝熱面で信頼性のあるデータが取れていない.この理由は,この末尾で説明する. 現在,熱流束変動を測定するための伝熱面の製作に取りかかっている. 中心部径6mmの実験が満足にできていない理由は以下である.伝熱面を2つ製作した.1番目では,接合時に空隙を確保するために挿入していたニクロム箔が3枚中1枚が挟まったまま抜けなくなった.これによって,中心部が遷移沸騰に移行する際にこの箔を通して熱が周囲部に伝わり,接触点付近で他とは異なる特性を示した.2番目の伝熱面では,円筒形のスペーサ(接合後その下で切断する)空隙を確保したので,1番目の面の問題は解消したが,前述の水素導入を行った結果,箔の銀が空隙に流れ込んで空隙の一部を埋めてしまった.今後,従来は50umであった銀箔の厚さを20umとすることとした.
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今後の研究の推進方策 |
二重伝熱面の中心部に縦横0.35mmの格子点32点上ならびにそのまわりの1.05mmの格子点20点上の0.2mm程度の深さに熱電対を設置した伝熱面を作成して,これを用いた熱流束分布の測定を行う. 外周部の幅(外径と内径の差の半分)が周囲部と中心部の伝熱特性に与える影響を調べることは有用だと判断して,その影響を調べることを追加することとした. 今後,表面がニッケルの場合の伝熱特性を調べていくが,その接合の条件出しも行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
熱流束変動を測定するための,長さ8mm程度の先端部だけを直径50umとした直径0.2mmのコンスタンタン線の製作を,以前依頼したメーカーに依頼したが,対応してもらえずに別のメーカーを探すことになったために,年度内に発注できなかった.別のメーカーを探して依頼することを計画している.
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