研究課題/領域番号 |
21K03924
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
十朱 寧 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (60288404)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超音波 / マイクロ波 / BDF合成 / 環境型固体触媒 / 流動型 / 分子軌道法 |
研究実績の概要 |
今年度では、まずマイクロ波を用いるフロー型量産化システムの可能性を検討した。フロー型量産化システムの構築には、流れる反応物へのマイクロ波照射の影響の把握が重要で、マイクロ波照射のシミュレーション用の定式化を試みた。続いて、熱流体に基づく流通型反応システムを設計した。とくに、加熱を均一的に行えるように工夫した。このほか、分子軌道法に基づき、マイクロ波照射によりBDF合成時間を加速させるのメカニズムを究明した。一方、本研究で提案した超音波・マイクロ波照射法を環境型触媒と併用して、種々な合成条件のもとで、異なる植物油、つまりバージンオイル、ジャトロファ油の合成を行い、BDF生成率をGCにより測定した。また、生成したBDFに対して品質評価を実施した。さらに、BDFの燃焼実験では、排気ガスとしてのNOxとCO2濃度を測定した。一連の解析と実験の結果、下記の示す結論が得られた。(1)マイクロ波照射時、反応物の活性化エネルギーが低下して、エステル反応がより速く進められたと考えられる;(2)卵とアサリの殻から調製した環境型触媒は主成分が酸化カルシウムで、エステル反応において適時な反応温度(90℃)、そして油とメタノールの混合比(5:1)、加熱時間(10分)の条件で、BDF合成率が95%以上に達しし、本研究で提案したマイクロ波BDF合成法の有効性が確認できた;(3)品質評価とエンジン効率測定の実験結果では、本実験作ったBDFはディーゼルエンジンの燃料として適しているといえる。(4)排気ガスの測定実験では、BDFを使うと、CO2濃度が低くなり、NOx濃度が高くなる傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フロー型のマイクロ波量産化システムの構築には遅れが出ている。最大原因としては資金不足であった。初年次、バッチ式のマイクロ波リアクターを導入する際に、およそ200万円ほどの研究費をあてた。3年間の消耗品の費用もあり、結局、フォロー型マイクロ波反応装置用のマイクロ発信機、アンプ、導波管などを新規購入する研究費の余裕がなくなった。しかし、フォロー型マイクロ波量産化システムの構築に必要なシステム設計などは完了し、研究資金が確保できたら、実験システムの組み立てに入れる状況である。一方、分子軌道法に基づいて、マイクロ波BDF合成時のエステル反応加速化のメカニズムの解明において多少の進捗があったが、本格的な解明にはまだ至らなかった。引き続き検討していく必要があると思われる。また、燃焼実験では、BDFと軽油の混合燃料に対してもっと混合比を増やして排気ガスの濃度測定とエンジンの熱効率測定を実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記のように主に以下の三つの方法による研究を進める。 (1) 電界解析と伝熱工学に基づく最適化フロー型のマイクロ波照射リアクタの設計と製作;(2) 誘電特性を考慮しオマイク現とその合成メカニズムの解明を行う;(3)触媒工学、マイクロ波化学工学および熱流体解ロ波照射による急速なBDF合成の実析に基づくBDFの量産化技術を実現する。 具体的には下記のように研究を進めていく予定である。 (1)シミュレーションの方法に基づいて新規でフロー型のマイクロ波照射リアクタの設計と製作する。続いて。フロー型のマイクロ波リアクターを中心とするBDFF合成システムを構築する。このほか、フロー型マイクロ波リアクタを用いてナノステンレス材料に固定し環境型固体触媒に乳化した油とメタノールの混合物に対してマイクロ波を照射し、SAF合成実験を実施するとともに、GCによるBDF収率を分析する。具体的な条件として、マイクロ波の出力、周波数、メタノールと植物油の混合比、触媒の使用量、触媒重複利用回数によるBDF収率への影響を調査する;(2)海藻油やジャトロファ油、廃食油に対して上記の合成方法をもとにBDFF合成のテスト量産化を行うとともに、合成したBDFの品質(粘度、着火点、酸価など)を調査し、JISのBDF規格と比較する。同時に、マイクロ波によるBDF燃料合成のメカニズムを詳しく解明する。このほか、BDF合成反応時の反応物誘電特性および環境型固体触媒の被毒特性を調査し、触媒活性を回復させる方法を検討する;(3)BDF燃焼実験では、機械工学科が有する小型タービンを用いて、本研究で合成したBDFを燃料とし、動力特性と排気ガス濃度の測定を行い、BDFを燃料としての妥当性を調査する。このほか、フロー型マイクロ波合成装置によるBDFF合成の量産化の可能性を検討・提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響による2021-2023年度において海外出張ができなかったため。2024年度では課外出張を計画しており、その学会参加費や旅費などに充てる予定。
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