研究課題/領域番号 |
21K03927
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
松本 大樹 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 講師 (50374757)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 流れの可視化 / 空力騒音 / ロックイン現象 / 振動モード |
研究実績の概要 |
パンチングメタル通気時に発生するロックイン現象による騒音増大の発生原因を探るために,パンチングメタル板後流の流れの可視化を行なった.流れの可視化は,高速度カメラとレーザーシート光源を用いたミスト法により実施した.より鮮明な可視化画像を得ることを目的に,レーザーシート光源と高速度カメラ,ミラーからなる可視化装置の位置決めがマイクロメートルオーダーで可能な装置を製作した.また,対象としたパンチングメタル板は,ロックイン現象が発生する最小の孔数である7つの千鳥配列状態のもので,可視化実験は,流速20m/sと41m/sとで実施した.その際に発生する騒音の特性は大きく異なり,20m/sではほぼ騒音発生はないが,41m/sではパンチングメタル板の通気方向に関わらずにピーク音が発生する.可視化面は,流れの軸方向(流れの側面)と軸直角方向(流れの正面)で行った. 下流に向かって孔の断面積が大きくなる向きはロックインが起こり騒音が増大し,下流に向かって断面積が小さくなる向きでは.騒音ピーク周波数が流速に比例して高くなるが,騒音増大が起こらない.その両者で,孔から流出する渦の干渉状態が以下のように異なることが明らかになった. ・下流に向かって断面積が大きくなる場合(騒音増大条件)は,隣り合う孔同士で渦が同時に流出する. ・下流に向かって断面積が小さくなる場合は, 隣り合う孔同士から流出する渦は互い違いに流出する ロックイン現象による騒音増大する際には,隣り合う孔から流出する渦が同時に流出する状態が必要であることが証明された.隣り合う渦同士が同時に流出することによって,圧力変動が大きくなり,板面をより大きい力で加振することができるためと考えられる.その孔の位置が振動モードの腹の位置と一致する際に,ロックイン現象が発生したと結論づけられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レーザーシート光源とその配置を精度良く設置するための装置開発により,鮮明な可視化画像を得ることができた.これによりロックイン状態での騒音増大の原因が明らかになった.研究計画によると,各孔での孔断面形状に依存する渦流出モデルを考案する年次であったが,可視化の精度を高めるために時間がかかり,モデル考案までは行き着いていないため,この面ではやや遅れていると思われる.しかし,今年度明らかになった事象により,より合理的な手法に着想するに至ったため,概ね順調に進展していると判断している.すなわち,渦流出の同期を防ぐため,当初計画では孔一つの形状を変化させることを考えていたが,多数ある孔全てに適応するには無理がある.そこで,板内での孔配置のみを変更する手法で同期現象抑制を目指すべきと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
一般的なパンチングメタル板では千鳥配列など規則的な孔配置が取られているため,板の振動の腹に孔が配置されがちである.そこで,非周期アインシュタインタイルを参考に孔配置を非周期的に変更したパンチングメタル板を用いて,騒音抑制を目指す. 振動モードは境界条件によって特定位置に振動の腹が配置され,板の形状と境界条件によって支配されている.ダクトに円管を用いる際には板は円形である場合が多く,その際の板の振動モードは点対称となり,腹の位置は周方向で特定されない状態である.実際の振動の腹位置は,板の設置状況によって現実的に決まり,設置方法による振動の腹位置の調整は非現実的でもある.そこで,渦流出を行う孔位置を変更することで,渦流出の干渉状態を変化させ,同期状態を崩壊させることでの騒音抑制を提案する. すなわち,孔位置の変更でロックイン現象における加振力を抑える手法である.腹の位置がどこに来ても孔間距離が不規則になっていることで,圧力変動を抑制し,振動および騒音を抑制することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進行状態により,新しいパンチングメタルモデルの作成が不要になったため,計画よりも物品費が少なくなった.可視化動画解析用のPC,保存用SSD等の記録メディアの購入と,新しいアイディアを実現するためのパンチングメタル板の製造費用の支出を計画している.
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