研究課題/領域番号 |
21K03931
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黄 吉卿 東京大学, 生産技術研究所, 国際研究員 (60870673)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロ流体システム / マイクロスイマー / 磁気駆動 / 流体マニピュレーション / バイオメディカル応用 / 病理的検査・診断 |
研究実績の概要 |
本研究では「磁気駆動可変ソフトモバイルマイクロロボティック流体キャリアシステムとバイオ応用に関する研究」を行っている。 既存のマイクロロボットシステムは小型であるため、基本的にセンシング、駆動、計算などの機能が外部にあり、ロボットそのものが持つ機能は非常に基礎レベルの機能に限定されているのが現状である。そのため、このような小型モバイルシステムは様々な分野で多くの応用が期待されながら、実生活への応用事例は数少ないのが世界的にも共通的な課題である。本研究ではこのような課題を踏まえながら、外部制御磁場によるローカル形態変化や磁気駆動特性を持つ多機能かつ汎用性の高いソフトモバイルマイクロロボットの提案と開発を目標とする。バイオメディカル応用として、汚染、感染などの病理的検査・診断のため必要である低侵害かつ遠隔での液状検体採取や診断に基づいた薬物搬送などが上げられる。このような実生活への応用を実現するために必要である、複数環境に適応可能な柔軟性を有し、ロバストで持続可能なマイクロロボットの開発を目指す。 本申請者は2010年からフランス国立科学研究センター(CNRS)の責任研究者(PI)としてマイクロナノロボティックスとマイクロ流体技術の融合研究を行ってきいるため、その経験を十分活用し、本提案研究に適している新たな材料の選定から設計、クリーンルームでのマイクロ加工技術による加工、開発されたデバイスの物理的特性分析と評価実験、ロボット制御技術による駆動制御及びその応用までの全開発プロセスを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクトの初年度(2021年度)には磁場方向の外部の磁場による駆動と可変性を持つソフトマイクロロボっティックスイマーの開発を目標とし、そのための加工システムとプロセスを開発した。加工システムは磁場方向の選択的制御を可能にし、紫外線による光重合が可能なシステムを自ら構築し、可変ソフトマイクロスイマーの開発に成功した。 ソフトマイクロスイマーの流体での磁気駆動や可変性を実現し、可変性による固体サンプルを把持操作を実現した。その把持操作は薬物などの固体サンプルを流体空間で安定したマニピュレーションを行うために応用できる。また、ソフト可変構造を活用し液滴サンプルの間での移動を実現し、スイマーによる液体サンプルを搬送し混合するなどの診断デバイス用のバイオサンプル準備プロセスに応用することができた。さらにバイオラボで多く使われているマルチウェルの複数チャンバー間の移動、搬送、混合などの3次元サンプルハンドリングへ展開している。さらにソフトスイマーは世界的にもっとも高い駆動特性、マニピュレーション性、ロバスト性を持っていることを評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究はスイマーに流体チャンバーや流体操作機能を持たせるためのデバイスの加工プロセスについて研究をしていく予定である。そのためには複数のレイヤ(磁気駆動層、変形層、マイクロ流体層、キャピラリー層)間のアセンブリが必要である。ロボティックアーム等による加工された個別に加工された要素デバイス層間のアセンブリを行うためのロボティックアセンブリシステムの構築を行い。デバイス生産性の向上を目標とする。 さらに複数台のスイマーの駆動制御のためのシステムを実現し、さらなる作業効率の向上を目標とする。 また、実際のバイオサンプルのハンドリングとバイオセンサーへの搬送などのバイオ応用への可能性の検証を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症対策による所属機関での行動制限の中、初年度に予定していたソフトスイマーの加工システムの構築のために物品を購入する前に、研究室にある材料や部品などを活用し試作した。その試作の結果に基づいて次年度にロボットアセンブリシステムを含む加工システムを構築することを予定しているため、次年度使用額が生じている。
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