研究課題/領域番号 |
21K03931
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黄 吉卿 東京大学, 生産技術研究所, 国際研究員 (60870673)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロ流体システム / マイクロスイマー / 磁気駆動 / 流体マニピュレーション / バイオメディカル応用 / 病理的検査・診断 |
研究実績の概要 |
本研究では「磁気駆動可変ソフトモバイルマイクロロボティック流体キャリアシステムとバイオ応用に関する研究」を行っている。2022年度にはソフトマイクロスイマーをフランス国立科学研究センター(CNRS)との共同研究によって3次元ナノリソグラフィと磁性金属薄膜のスパッタリングにより、ソフトスイマーを50倍以上小型化することに成功した。また、クリーンルーム対応で量産可能なプロセスを提案しその可能性を証明することができた。既存のミリスケールのソフトスイマーと今回開発したマイクロスケールのソフトスイマーを外部磁場生成システムにより選択的に制御することもできた。また、そのマイクロバブルトラップによる3次元の制御と液滴サンプルの液体・空気間の移動がより簡単にできることができることを証明した。さらに、液中のマイクロファイバーのような個体サンプルのマニピュレーションにも応用可能であることも証明した。これらの成果はMEMS分野の最も権威の高いドイツベルリンで行われたIEEE MEMS 2023学会に論文が採択され、口頭発表することができた。また、より大きい体積の液体サンプルを運ぶため、Micro Fractal Pipette (MFP)を提案していましたが、そのMFPを磁気駆動させるために、磁性を持つ金属をスパッタリングすることを試したが、十分な磁性駆動特性を持たせることができなかったため、小型磁石をMFPの下側にアセンブリし、それをロボットアームによる複数台のMFPを選択的に磁気駆動させることに成功し、それを用いた複数の液体サンプルの間の混合などへの応用できることを証明した。その結果をフランス国ブザンソンで行われたJNTE2022にてポスター発表することができた。さらに、イオンゲルアクチュエータのマイクログリッパも開発することができ、個体サンプルの把持と分析に貢献できた(J. MEMS)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には磁場方向の外部の磁場による駆動と可変性を持つソフトマイクロロボっティックスイマーと加工手法を開発した。加工システムは磁場方向の選択的制御を可能にし、紫外線による光重合が可能なシステムを自ら構築し、可変ソフトマイクロスイマーの開発に成功した。 ソフトマイクロスイマーの流体での磁気駆動や可変性を実現し、可変性による固体サンプルを把持操作を実現した。その把持操作は薬物などの固体サンプルを流体空間で安定したマニピュレーションを行うために応用できる。また、ソフト可変構造を活用し液滴サンプルの間での移動を実現し、スイマーによる液体サンプルを搬送し混合するなどの診断デバイス用のバイオサンプル準備プロセスに応用することができた。さらにバイオラボで多く使われているマルチウェルの複数チャンバー間の移動、搬送、混合などの3次元サンプルハンドリングへ展開している。さらにソフトスイマーは世界的にもっとも高い駆動特性、マニピュレーション性、ロバスト性を持っていることを評価した。 2022年度にはフランス国立科学研究センター(CNRS)との共同研究にて3次元ナノリソグラフィで既存のスケールより50倍以上小型化ソフトスイマーを開発することができ、その上に磁性材料のスパッタリングを行いソフトスイマーの小型化と量産に繋がる研究成果を得ることができた。また、イオンゲルアクチュエータによるマイクログリッパを開発し個体サンプルのマニピュレーションと分析に貢献できた。 また、液体サンプルの搬送のための3次元マイクロフラクタル構造を持つマイクロピペットの磁気駆動とそのバイオ試薬分析への応用のために試薬サンプルの混合、搬送に応用することができることを示した。これらのスイマーの固体・液体サンプル混合・搬送能力を示すことで、本研究で実現を目指しているラボオンロボットに貢献できるモバイルエージェントとして期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究はこれまで開発してきているソフトマイクロスイマーをバイオ細胞のマニピュレーションに応用する研究を行う予定である。そのためにソフトスイマーのデザインの見直しを行う。実際のバイオ培養液でのソフトスイマーの駆動特性の分析実験を行い、必要に応じて駆動特性の改善のためにスイマーの表面コーティングに関する実験も行いたい。また、スイマーの空気中での駆動特性に関しても評価を行い、液体、個体サンプルの液中、空気中での搬送を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
バイオの実験を行っているため、実験装置利用料や試薬などに使用額が発生することを予想している。
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