研究課題/領域番号 |
21K03933
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
立矢 宏 金沢大学, 高度モビリティ研究所, 教授 (10216989)
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研究分担者 |
樋口 理宏 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (50455185)
鈴木 陽介 金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (20582331)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タイヤ / 路面摩擦係数 / スリップ率 / ブレーキングスティフネス / インテリジェントタイヤ |
研究実績の概要 |
先に開発を行った,室内にてタイヤに高荷重を作用させながら回転させ,接地面を代えることで摩擦係数を変化させることができ,さらに,接地面とタイヤとの間の相対速度,相対角度を変化させて,タイヤ周速度と接地面速度との比をもとに求められるスリップ率,タイヤの周速度の方向と接地面の進行方向とのなす角であるスリップ角を調整可能なタイヤ走行模擬装置を用いて,種々の条件で実験を行った.その結果,摩擦係数の最大値が0.4から1.0付近となる複数の条件下で,路面摩擦係数μとスリップ率Sとの関係を測定することできた.得られた結果は,スリップ率Sの大きさが0から増加するにつれて,路面摩擦係数μも増加し,スリップ率Sが10%を越える付近で一定となる予想どおりの傾向を示した.また,スリップ率Sに対する路面摩擦係数μの立ち上がりにおける傾きが,路面摩擦係数の大きさによって変化し,低摩擦になるにつれて,その傾きが減少することを明らかにした.さらに,本研究で開発している路面の摩擦係数が測定可能なインテリジェントタイヤを用いて実車で走行実験を行い,時速50km程度で,乾燥路面,湿潤路面でのμ-S関係を測定した.その結果,乾燥路面,湿潤路面で,路面の摩擦係数とスリップ率の関係が変化し,摩擦係数のピーク値,立ち上がりの傾きが異なる複数の関係を得ることができた.また,その変化の傾向が,室内タイヤ走行模擬装置による結果と同様に変化し,特に,スリップ率に対する路面摩擦係数の立ち上がりの傾きが路面摩擦係数とともに減少する傾向を確認できた.さらに,これらの結果を用いて,スリップ率に対する路面摩擦係数の立ち上がりの傾きと,路面摩擦係数がピーク値を示すスリップ率との関係が簡単な指数関数で近似できることを示し,その有用性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり,室内タイヤ走行模擬実験装置を用いて種々の路面のμ-S関係を得たとともに,さらに,実車にてインテリジェントタイヤを用いて,乾燥路のみならず,湿潤路のμ-S関係を測定することができた.また,これらの測定結果から,路面の摩擦係数に対するμ-S関係の変化の傾向を明らかにするとともに,路面の摩擦係数が最大となるスリップ率を予測する簡便な実験式を提案することができ,順調に進捗していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
実用化のためには,特に実車走行においてμ-S関係の測定値がさらに必要である. また,これまでに路面の摩擦係数が最大となるスリップ率を予測する簡便な実験式を提案したが,μ-S関係全体を測定する実験式の確立も目指す.そのために,まず,実車での測定精度を確認するとともに,測定精度向上のための方法を検討する.得られた方法に基づき,種々の路面でμ-S関係を測定する.また,室内タイヤ走行模擬装置の結果ともあわせてμ-S関係を表す式を確立する.さらに,スリップ角と路面摩擦係数との関係の測定も実施する.これらの結果から路面摩擦係数の測定結果を利用した先進的な車両操舵制御方法を確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度,予定していた室内タイヤ走行模擬装置による測定のみならず,実車にて路面摩擦係数とスリップ率の関係の測定が行えた.妥当な結果と判断しているが,実車走行時の真値が測定できないため,正確な評価が行えていない.そこで,限られた条件となるが路面摩擦係数の測定が行える装置を導入し,測定精度の確認を行うため,翌年度分とあわせた経費により,同装置を購入する計画である.
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