研究課題/領域番号 |
21K03935
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 真之 京都大学, 国際高等教育院, 特定講師 (00551376)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 非線形局在振動 / 非線形動力学 / 格子振動 |
研究実績の概要 |
本研究では,移動型エネルギー局在振動の存在性や安定性が,格子の次元にどのように依存するかを明らかにすることが主目的である。R3年度は,従来研究で対象とした2自由度振動子列を3列に増やした準1次元格子を導入し,シミュレーションモデルの作成,移動型エネルギー局在振動の数値的な生成実験,および静止型エネルギー局在振動の安定性に関する検討を行い,安定性に関する知見を得た。 本研究では機械振動系での実験的研究を想定しているため,振動子として共振周波数が数10Hzの棒バネ,非線形相互作用として永久磁石間の磁気力を用いる。この棒バネを1列に並べた振動子列を考えると,各棒バネは列方向の他に列に垂直な方向にも振動する。本研究ではこのような振動子列を2自由度振動子列と称する。従来研究により,2自由度振動子列においては,列に垂直な方向へ座屈するような不安定性が新たに生じ,エネルギー局在振動が不安定化されることが知られている。そこで,2自由度振動子列を3列に増やし,エネルギー局在振動の不安定化が抑制されるかどうかを数値的に検討した。その結果,僅かではあるが,よりエネルギーの高い局在振動も安定に系を伝搬できる傾向があることが明らかになった。また,従来ほとんど不安定であった横振動型の静止型エネルギー局在振動も安定化されることが明らかになった。この安定化メカニズムはまだ明らかでないため,R4年度も引き続き検討する。また,移動型のエネルギー局在振動については,横方向の振動を伴ったものも広く観察されているが,その性質はほとんど明らかになっていない。R4年度以降では,このような移動型局在振動のみをシミュレーション結果から取り出し,性質を詳しく検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,2自由度振動子列を複数列に拡張した系,すなわち準1次元格子における移動型エネルギー局在振動に関する数値シミュレーションおよび実験を計画している。R3年度は,数値シミュレーションを主に遂行した。その結果は研究業績の概要で述べたとおりであり,おおむね計画通りに進展している。一方,実験的研究についてであるが,新型コロナウイルスの感染拡大に伴う種々の措置により,実験の遂行が困難な時期があった。このため,計画通りには進展しておらず,引き続きR4年度も実験装置の製作を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
R3年度に明らかとなった準1次元格子における移動型のエネルギー局在振動の安定化,および横振動型の静止型エネルギー局在振動の安定化についてそのメカニズムを検討する。このため,磁気結合を有するモデルの他に,多項式ポテンシャルを有する単純なトイモデルを活用して検討を行う予定である。また,振動子列を3列から5列などに増やした場合も検討する。他方,実験装置の製作を進める。装置や材料の調達に時間を要する可能性があるため,実施はR4年度後半を想定し準備を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
R3年度は,新型コロナウイルスの感染拡大に伴う措置により,実験の遂行が困難な時期が生じたため,数値シミュレーションによる検討に注力した。このため,実験装置に使用予定であった物品費をR4年度に繰り越すこととなった。これはR4年度に執行予定である。また,同様の理由により国内外の学会や研究集会がオンラインとなり,予定していた旅費をR4年度に繰り越すこととなった。こちらは今年度以降の学会,研究集会への参加のために使用する。
|