研究課題/領域番号 |
21K03936
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
増田 新 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 教授 (90252543)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環境振動発電 / 非線形振動 / 反磁性 / 磁気浮上 |
研究実績の概要 |
本研究は,永久磁石を用いたコンパクトな非線形磁気ばね振動子に反磁性体による受動的磁気浮上技術を組み合わせることにより,大ストローク・極低損失の非線形磁気浮上磁気ばね振動子を開発,非線形振動子を用いた広帯域振動発電デバイスにおける高出力応答を保証するための大域的応答安定化制御のセルフパワード化を達成しようとするものである. 2022年度は,(1)反磁性複合材料板による渦電流損失低減効果の実験的検証,(2)反磁性複合材料板を用いた角筒型および多角形筒型磁気浮上振動子の磁気浮上安定化のための有限要素法解析スキームによるパラメータスタディ,(3)広帯域非線形振動子の設計論の確立,(4)セルフパワード応答安定化制御の実験的検証を行った.まず(1)について,初年度に開発した反磁性複合材料板を用いた水平振動子を作成し,100以上のQ値を持つ振動子を実現した.(2)では,この反磁性複合材料板を管壁として用いた多角形筒に磁石を封入し,それを別の固定磁石により軸方向に浮上支持した磁気浮上振動子を安定化するための設計論を確立すべく網羅的なパラメータスタディを行った.しかし実用的に有用な40Hz-80Hz程度の共振帯域を持ち,管壁と非接触で浮上可能な振動子の設計を見出すことはできなかった.浮上振動子の固有振動数は,磁石および反磁性材料の形状と配置,磁石の密度と磁束密度,および反磁性材料の負の磁化率で決定されるが,材料物性から決まる固有振動数の上限値が存在するものと推察された.(3)では,実用的な広帯域ハーベスタの設計論として対称ハードニング振動子の設計論を確立した.さらに(4)では,初年度に行ったエネルギー収支解析と(3)の設計理論に基づき,小型のハードニング型ハーベスタを設計製作し,マイコンおよびスイッチング回路以外の電力を自己給電する応答安定化制御を実現し,連続動作が可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,2022年度において円筒型磁気浮上振動子の磁気浮上安定化のためのパラメータスタディを行い,実用的に有用な40Hz-80Hz程度の共振帯域を持つ大ストローク・極低損失の非線形磁気浮上磁気ばね振動子を開発する予定だった.しかし,非接触浮上可能な設計と目標とする共振帯域を両立できず,試作機の製作も行うことができなかった.直観的な見通しではあるが,材料物性から決まる固有振動数の上限値が存在するものと推察された.この仮説については最終年度である2023年度において理論的検証を行い,設計が不可能であるなら不可能性の証明を行うなど,見通しの良い回答を導きたい.その他の計画,すなわち応答安定化制御のセルフパワード化に向けた設計論の整備や実証実験については順調に進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2023年度は,理論的な側面では,2022年度に整理した広帯域ハーベスタの設計論を対称ソフトニングおよび非対称ハード・ソフトニング振動子に拡張し,実用的な広帯域ハーベスタの設計論を確立する.また,応答安定化の制御性を定量評価するための理論体系を整理する.反磁性材料による非接触浮上振動子については,前述した材料物性と固有振動数に関する仮説の理論的検証を行い,設計可能なパラメータ領域を特定するなど,見通しの良い理論の確立を目指す.その結論にも依存するが,実証実験の観点からは,反磁性材料による非接触浮上振動子の実現には拘らない方針に変更し,実用的な非線形広帯域振動子を用いたハーベスタにおいて応答安定化制御を適用し,そのセルフパワード化を達成する.
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