車両や人間の通行,機械の運転などにより不可避的に発生する振動を利用した振動発電はメンテナンスフリーであることが大きな特徴であり,機械装置やインフラ設備のモニタリングなどスマートシステムの個別電源としての利用が多い.一方で,振動発電は加振の振動数が振動体の固有振動数に一致する共振状態では高効率の発電が実現できるものの,加振振動数が固有振動数から離れるにつれ急激に発電効率が低下する.本研究では,加振振動数の変化に対して非常に簡単な機構で振動特性を変化させ,制御装置を組み込むことなく加振振動数に自動的に共振状態が追従する振動機構を提案・実現し,高効率の振動発電に有効な装置の基本技術を確立する. 本研究で提案している装置の主要要素は,曲げとねじり方向回転の連成振動が生じる板状振動体であり,この連成振動に起因して,振動体が振動方向に対して垂直にも動くことで板状の長さが変化し,加振振動数に追従するようにその固有振動数を変化させる特徴を持つ.ただし,この現象が生じる基本原理が不明であり,現象の再現も不安定であることが課題であった. 研究結果として,板状振動体の中間に存在するクリアランスに加え,根元支持部に存在する小さなクリアランスが自動共振追従現象,特に共振状態を保持する現象に重要であることがわかった.これらを考慮した数値解析モデルを構築し,共振に近い状態を保持する現象を数値シミュレーションで再現することで自動共振追従のメカニズムの一端を解明した.また,振動体の固有振動数を上昇させる動きは板ばねの取り付け方向の傾きに起因すると予測し,数値シミュレーションおよび実験で再現した.この数値シミュレーションの成功は研究進展の画期となり,自動共振追従現象を解明して設計法を確立する上で大きなステップとなった.
|