研究課題/領域番号 |
21K03939
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
川口 正隆 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (90876799)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多段部分構造モード合成 / 並列演算 / モード解析 / 非線形振動解析 / ガタ構造物 / 解析効率化 / 解析自由度 |
研究実績の概要 |
自動車等の量産製品では開発の期間短縮やコスト削減の為に,製品規模の有限要素モデルによる大規模振動解析が多用されており,大規模モデル特有の解析時間の大幅な増加を抑制する為に,自動多段部分構造モード合成ソフト(AMLS)が汎用構造解析コードNASTRANに対して提供されている.しかし,線形構造物に限定され,ガタ等の非線形要素を含む複雑な構造系への展開ができない問題がある.一方,製品規模の大規模解析では,実機特有のガタや粘弾性体等の非線形要素を含んだ過渡振動解析のニーズも強いが,運動方程式を解くには膨大な解析時間を要し現実的でないので,製品開発では普及しておらず,多くの問題が残されている. そこで,非線形系の過渡振動解析の効率化(解析時間短縮)を目的に,2021年度には小規模(約5千自由度)及び中規模(約10万自由度)の構造サンプルの振動解析モデルを作成し,以下のように多段モード合成法を適用することにより,ガタ系構造物の非線形の過渡振動解析を実施し成果を得た. (1)小規模構造サンプル(約5千自由度):多段モード合成プログラムを作成し,多数の部分構造(セグメント)に分割した解析モデルに適用し自由度を大幅に減少させた.その解析モデルにガタを含む機械要素(ラッチ,ヒンジ)として不感帯を有する非線形ばね特性を適用し,時刻歴でガタの接触状態を判定することにより,大幅に短い解析時間で安定した振動解析が可能であることを示した. (2)中規模構造サンプル(約10万自由度):NASTRAN上でAMLSを利用して,小規模サンプルと同様に非線形運動方程式の過渡振動を解析する解析プロセス(DMAP)を作成し適用した結果,解析時間は従来法に比べて80%以上短縮されることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は以下のような3年計画で推進しており,1年目で解析理論の実証と,汎用構造解析コードNASTANでの解析プロセスの開発を完了したので,計画通り進捗している. (1) 2021年度:多段モード合成による解析時間短縮に関する解析理論の実証と汎用構造コードでの解析プロセスの開発 (2) 2022年度:大規模構造サンプルへの1次適用と解析時間短縮の実証 (3) 2023年度:大規模構造サンプルへの2次適用と解析時間短縮の実証
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である非線形系の過渡振動解析の効率化を検討する過程で,ガタ系構造物の過渡振動の解析値が,ガタが無い場合(線形系)と有る場合(非線形系)で大きく変化することが明らかになったので,2022年度に振動実験を追加し,ガタが有る場合の解析値を実験値と比較して妥当性を確認することとした. 振動実験は5項で述べた小規模構造サンプルを供試体として作製し,振動台に載せて加振することにより,ガタの有無に関する過渡振動の変化を計測し,解析値と比較する. 解析精度に不足があれば,非線形要素(ガタ)のモデル化方法の見直し等を実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では並列計算機を購入して解析環境を構築する予定であったが,7項で説明したように2021年度に振動実験の必要性を見出したので,解析環境については解析ベンダーの環境を借用することで効率的に費用を削減した.それにより,削減した費用を振動実験の供試体作製等に使用することとした.
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