研究課題/領域番号 |
21K03945
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
辺見 信彦 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (80256669)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フレクソエレクトリック効果 / 電気分極 / 圧電材料 / チタン酸ジルコン酸鉛 / ねじり振動 |
研究実績の概要 |
2021年度は研究計画の初年度であり,フレクソエレクトリック効果と圧電効果による電気分極の複合現象について調査した。具体的には,正方形断面の角柱構造のPZTセラミック材に対して,ねじりによって発生するひずみ勾配に,微小な曲げが同時に作用した場合の変形状態をFEMにより解析した。次にPZTの結晶構造であるぺロブスカイト構造内のイオンの移動方向と移動量を考察し,変形量に対する発生電気分極量の算出を試みたが,分子方向の不確定性やフレクソエレクトリック係数の計測値との比較などの必要性が生じ,推定にはいたらなかった。次にねじりとたわみの複合的変形を実験により調査するため,まずは正方形断面のPZT角棒を片持ちでチャッキングし,積層型圧電アクチュエータを複数使用することにより,たわみのみの変形,ねじりのみの変形,たわみとねじりの複合変形をそれぞれ調査した。その結果,ねじり変形のみの場合は,ねじりの方向によって出力の大きさが異なること,ねじり量を大きくすると波形が歪むとともにかえって分極出力電圧が小さくなる傾向が得られた。曲げ変形のみの場合は安定した出力が得られた.さらに曲げとねじりの複合変形の場合は,フレクソエレクトリック効果と圧電効果の相乗作用により,より大きな分極出力が得られた。またねじり角がある一定値を超えると出力が小さくなる現象が観察された。複合変形における具体的な出力の大きさの一例としては,約100mmの突き出し長さに対して6μm程度の先端たわみ量と1mrad程度のねじり量に対して,条件により0.5~2V程度の大きな出力となった。ねじり量の大きさにより非線形的なふるまいが現れた理由を調査する必要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通りねじり及び曲げに対する単一変形及び複合変形の状況をシミュレーションと実験の両面により調査することができた。シミュレーションでは分極推定量確定には至らなかったが,それを保管するための予備実験による必要パラメータの値等一部を同定することができた。また実験による検討では,ねじり変形に対して非線形性が生じることが明らかになり,新たな現象を新たに確認することができた。実験装置の性能向上についても課題を明確化することができた。以上により,当初計画に対して至らなかった点があるものの,新しい現象を見出し,次のステップへの検討内容を明確化させることができたため,概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずはねじり方法とたわみ方法の状況を詳細に観察し動きについて計測する。摩擦による影響を回避させるために弾性案内を用いたチャック部の指示方法に装置を改良する。その際,FEM解析により改造に対する動作確認を援用しながら装置を設計する。素子については圧電セラミック材料として特性のばらつきと経年劣化があるため,新たな素子を入手しサンプル数を増加させる。単一変形及び複合変形に対する素子の分極出力と状態を詳細に調査する。基礎的な特性を実験により明らかにしたのちに,フレクソエレクトリック効果と圧電効果を複合させた曲げ2方向とねじり1方向の固有振動数を調整した機能性素子をFEMベースで設計する。設計した素子を実際に製作し,始めに単一方向振動に対する基礎特性を調査し,その後,複合振動に対する応答を詳細に調査し,実用化に向けた課題を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の使用額が生じた理由は,フレクソエレクトリック素子の応答が当初想定よりも高かったため,必要としていた物品を購入しなくとも研究の進行が可能となったことに加え,それにより次年度に追加で検討すべき事項が生じ,予算を次年度に持ち越す必要がでたため。 ねじりと曲げの複合変形を高精度に実現することが想定以上に難しことが判明したため,当初は1種類の試験装置を製作する計画だったが,いくつかの条件で複数の実験装置を製作することとなり,次年度に移行させた予算は,その製作費,部品費に使用する。
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