研究課題/領域番号 |
21K03949
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
劉 孝宏 大分大学, 理工学部, 教授 (60230877)
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研究分担者 |
松崎 健一郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (80264068)
中江 貴志 大分大学, 理工学部, 准教授 (80579730)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自励振動 / 回転体の振動 / 多角形化現象 / リーマ加工 / 不等分割刃 |
研究実績の概要 |
本研究は,リーマを主たるターゲットとしたボーリング加工における多角形化現象を完全に抑制可能な,革新的切れ刃角度配置を求めることが第一の目的である。リーマの刃数や直径は多様であり,特に,刃数の多いリーマについては,刃の角度配置が無限に存在するため,固有の技術として確立するためには,統一した評価基準が必要となる。そこで,本研究では,多角形化現象を完全抑制可能な角度配置を,統一的に評価できる理論的基準値(以後,基準値と呼ぶ)を決定し,実験的に有効性を検証することが第二の目的である。 令和3年度は,(1)遺伝的アルゴリズムを用いた多角形化現象を最も抑制可能な不等分割刃リーマの理論的最適化,(2)基準値の検討と数値計算,(3)数値計算により最適化された6枚刃リーマの試作と基礎実験を主な計画としていた。 不等分割刃リーマの最適化については,遺伝的アルゴリズムによるプログラムを作成し,6枚刃リーマに関する数値計算を開始することができた。また,数値計算により求められた6枚刃の最適不等分割刃リーマについて,試作を行い,基礎実験を行った。基礎実験の結果,等分割刃リーマと比較し,極めて良好な真円度形状を得ることができた。また,市販の不等分割刃リーマとの理論および実験的比較を行い,提案した不等分割刃リーマの有効性が確認できた。これらの研究成果を日本機械学会Dynamics and Design Conference 2021で研究発表した。 また,基準値については,リーマ回転数が0付近の特性根の最大値で,最大特性根がおおむね評価できることがわかった。この評価方法については,次年度以降,異なる刃数のリーマと合わせて研究を進めることを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,リーマ工具の多角形化現象を防止するための不等分割刃リーマについて,特に6枚刃リーマをターゲットに研究を進めた。遺伝的アルゴリズムを用いた多角形化現象を防止するための不等分割刃リーマの最適設計については,プログラムの作成を完了し,数値計算を開始した。数値計算は,リーマ回転数が100Hzまでの範囲におけるすべての特性根を計算し,そのうち実部が最大の特性根を評価基準とした。等分割刃リーマ,市販の不等分割刃リーマ(45-60-75-45-60-75 deg.),5deg.刻みで良好と判断した不等分割刃リーマ(45-45-90-55-55-70 deg.)および遺伝的アルゴリズムにより最適化した不等分割刃リーマ(66-36-78-87-44-49 deg.)について,評価を行った。理論解析から,遺伝的アルゴリズムにより最適化した不等分割刃リーマの特性根実部最大値が最も小さい結果となった。 数値計算結果をもとに,リーマの試作を行った。試作したリーマの直径は8mm,実験における回転数は2000rpm~6000rpm,送りは0.1,0.3,0.6mm/revである。実験結果から,等ピッチリーマでは,7角形の多角形化が発生し,その他の不等分割刃リーマは,一定の多角形化現象抑制効果があるものの,遺伝的アルゴリズムにより最適化した不等分割刃リーマが最も真円度が小さくなる結果が得られた。この結果は,理論解析結果と定性的に一致している。 また,基準値については,リーマ回転数が0付近の特性根の最大値を用いて,最大特性根の値との相関を調査したが,おおむね線形的な相関が得られたため,統一的に評価できる基準値として使用できる可能性を見いだすことができた。 これらの成果は,当初の研究計画と同じ進捗であるため,おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では,不等分割刃リーマの最適設計を行うための根幹となる解析プログラムの作成を完了したため,令和4年度以降では,同様のプログラムを活用した他の刃数のリーマについて,同様の解析手法の有効性について検討する。具体的には,以下の研究計画で実施予定である。 (1) 不等分割刃リーマの理論的最適化と基準値による評価:遺伝的アルゴリズムを用いた最適化プログラムを,広く利用されている4枚刃および8リーマについて計算を開始し,最適な不等分割刃角度配置を求める。また,リーマの刃数は偶数刃であることが多いが,奇数刃を用いることもあるため,5枚刃(あるいは7枚刃)についての数値計算も合わせて実施する。6枚刃で検討を行った統一的に評価できる基準値について,他の刃数に対しても同様の基準として採用できるかどうかを数値的に検討する。 (2) 精度検証のための評価実験:(1)で実施した理論解析結果をもとに,4枚刃,8枚刃リーマの試作を行う。試作完了後,6枚刃リーマと同様に,マシニングセンターを用いて加工実験を行う。リーマは,複数の種類について検証する。加工実験による切削力および加工後の真円度測定結果から,選択したリーマの評価を行い,理論解析結果と比較検証する。同様に,5枚刃(または7枚刃)リーマについても実験,評価を実施する。 (3) 基準値の妥当性に関する実験的評価:(1),(2)の結果から,基準値と実験結果との比較検討を行い,基準値の妥当性について評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値計算において,当初予定していた統一的に評価できる基準値について,他の刃数に対する予備的な計算を実施した結果,より精度の良い基準値を得るための新たな知見が得られ,新たな知見を分析するための計画変更が必要になった。研究の推進には,高速の数値計算が必要であるため,計算用コンピュータおよび数値計算ソフトウェア等に使用予定である。
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