研究課題/領域番号 |
21K03961
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
相山 康道 筑波大学, システム情報系, 教授 (60272374)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 可変剛性機構 / 非ニュートン流体 / 衝突 / 接触 |
研究実績の概要 |
今年度はまずは,これまでに開発した空気圧を利用した可変剛性機構の構成の見直しを行った.ジャバラ機構とサポートワイヤを用いることで空気袋と内壁の接触による摺動抵抗をなくすことには成功しており,ほぼ線形の剛性を空気圧に比例する形で実現できている.しかし,機構の強度の問題から空気圧を0.3MPaよりも高めることが難しく,剛性は目標の10分の1から20分の1程度にとどまっている.様々な機構部品の購入,3Dプリンタによる試作を行い,機構の検討と形状の検討を行ったが,これらの数値の改善には至らなかったため,他の方式の検討が必要であろう,との結論に至った. これを解決する手段として,(1)弾性部の可動範囲を現在の±90度よりも狭めることで,角度変位に対する空気袋の体積変化率が大きくなり,剛性を高める,(2)空気ばねだけに頼るのではなく,非圧縮性の粘性流体を用いることで,速度抵抗を作り,剛性とは別の方法で対接触,対衝突性能を作り出す,という2種類を検討している. (2)の粘性流体として,せん断速度に応じて粘度が変化する非ニュートン流体の活用を検討しており,次年度以降に具体的な設計に入る予定である.せん断速度が小さいときには粘度が高く振動が抑制され,衝突などのせん断速度が大きい時に粘度が小さくなる擬塑性流体やビンガム流体を用い,可動範囲の狭い空気圧可変剛性機構と制御システムにより,接触や衝突に対し強い関節システムの構築を進めていく.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,空気圧可変剛性機構単独での高剛性化の検討を続けていたが,可動範囲を狭める以外の案で効果が見込めるものが出てこなかった.また,非圧縮性流体と機械式ばねを用いる高剛性可変剛性機構という当初の計画についても,関節機構を小さく軽く作るという目標に合致する開発が進まず,難しい状況となっていた. その後,弾性に限定するのではなく,粘性を用いた対衝突と対接触の検討を行った.こちらも当初はMR流体等の検討をしていたため,小さく軽い関節部という条件に合致しなかった.非ニュートン流体という可能性にたどり着いたので,今後はこの流体を用いた開発を進めることで,遅れを取り戻す計画を進めている.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は,当初計画していたいくつかの手法について,あまり良い成果が出せなかったが,非ニュートン流体を用いた可変粘性を用いる手法を検討することとした. 今後は,粘性を利用した対衝突と対接触の機構および制御手法の検討を進め,関節の試作を行っていく.せん断速度が小さいときには粘度が高く振動が抑制され,衝突などのせん断速度が大きい時に粘度が小さくなる擬塑性流体やビンガム流体を用い,可動範囲を狭くした空気圧可変剛性機構と制御システムにより,接触や衝突に対し強い関節システムの構築を進めていく. 検討すべき課題は,(1)どのような流体を用いるのがよいか,(2)関節部をできるだけ小さく軽く作るための流体の封入方法,(3)粘弾性による対衝突,対接触性能を作る制御則,がある.(1)の流体の種類については,封入や交換の扱いが容易で,望ましい粘度と可変性を得られるものを実験的に探していく.(2)の機構部については,空気圧の弾性部と非ニュートン流体の粘性部をそれぞれ邪魔をせず,かつ漏れのない機構の工夫を検討していく.(3)の制御則の構築については,まず非ニュートン流体を含めた粘弾性特性のモデル化と,狭い可動範囲内でいかに振動抑制と撃力の低下を実現するか,シミュレーションの繰り返しを行っていく.
|