研究課題/領域番号 |
21K03969
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
藤川 太郎 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (40618394)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蝶 / はばたき / 翅形状 / 飛翔メカニズム / 運動解析 / 数値流体シミュレーション / はばたきロボット |
研究実績の概要 |
初年度から継続して,蝶の飛翔運動解析と数値流体シミュレーション解析,小型はばたきロボットの開発を行った.蝶の飛翔運動解析では,引き続き東京都の足立区生物園にご協力いただき,複数種の蝶の飛翔の様子を高速度カメラを用いて撮影した.そのうち,アゲハチョウ科のナミアゲハ,タテハチョウ科のオオゴマダラおよびシロチョウ科のツマベニチョウについて3次元運動解析を行った結果,水平飛翔時のフラッピング周波数は,それぞれ11Hz,7Hz,9Hzほどであり,そのときのフラッピング角の範囲はそれぞれ,60degから-30deg程度,60degから-30deg程度,80degから-60deg程度であることがわかった.先行研究より,アゲハチョウの飛び立ち時のフラッピング角が80degから-60deg程度であったことから,アゲハチョウについては水平飛翔時にはその角度をやや小さくしていることが明らかになった.また,翅サイズがより大きなオオゴマダラはフラッピング周波数が低く,同程度の翅サイズであるアゲハチョウとツマベニチョウでは,ツマベニチョウの方がフラッピング周波数が低い結果となった.この要因の1つが後翅形状の違いにあることが示唆された.次に,複数種の蝶の翅形状を3次元モデル化し,数値流体シミュレーション解析によりそれぞれの空力特性を求めた.その結果,どの種も迎角10deg程度が最も揚抗比が高いことがわかった.また,翼弦長が長い翅形状ほど,揚抗比が高くなる傾向にあることも明らかになった. 以上の翅形状による飛翔特性の違いを検証するため,初年度に開発した機体を基に,飛行実験を行うための小型はばたきロボットを開発した.小型のリチウムイオン二次電池を搭載し,モータ駆動により10Hz程度のフラッピング運動が可能である.翼幅長は200mm,質量は2g以下で製作し,10m以上の飛行を可能としている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度から引き続き,複数種の蝶の飛翔画像データを取得することができた.そのうち解析可能なデータはごくわずかと限られてしまったが,アゲハチョウ科,タテハチョウ科,シロチョウ科それぞれの蝶のフラッピング運動について比較を行うことができている.現在は,飛翔軌跡やピッチ角の解析も合わせて進めているところである.数値シミュレーションによる解析では,アゲハチョウ科4種,タテハチョウ科4種を解析した.いずれの種も迎角10deg程度で最大の揚抗比3程度を示していたが,翅サイズの大きなオオゴマダラやナガサキアゲハの3.5程度と,他と比較して高い数値となった.より詳細なデータ解析を行うとともに,フラッピング運動を再現したシミュレーションによる運動解析を行う予定である.以上の翅形状による空力特性の違いを小型はばたきロボットで検証するため,水平飛翔可能なはばたきロボットを開発した.翼幅長は実際の蝶の約2倍と大きいが,リチウムイオン二次電池を搭載し,10m以上の飛翔を実現した.これにより,はばたきロボットを用いた飛行実験解析により形状の異なる翅がもつ空力特性の違いを検証することが可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
蝶の翅自体の空力特性は順調に解析が進められているため,令和4年度で実施できなかったフラッピング運動を再現した数値流体シミュレーションを行い,翅形状の違いが飛翔特性にどのように影響を与えるのかを明らかにする.そして,令和4年度に開発した小型はばたきロボットに形状の異なりを再現した翅を実装し,飛行実験を行うことで飛翔特性の違いを検証する.蝶の運動解析も継続して行うことで,解析データ数も増やす予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
社会状況による活動制限のために蝶の撮影回数が減り,解析対象となるデータ数が少なく人件費が不要になったため.
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