昨年度開発した,水平飛翔可能な2gの小型はばたきロボットをベースとし,アゲハチョウ科のナミアゲハとジャコウアゲハ,タテハチョウ科のアサギマダラとオオゴマダラのそれぞれをモデルとした翅を実装した機体を4種類製作した.直径4mmのコアレスモータと減速機,リチウムイオン二次電池を搭載し,7Hz程度のはばたき運動により飛翔する.翼面荷重を考慮し,いずれの機体も翅のサイズは翼幅長110mmとした. これらの機体を0.3m/sの初速を与えてはばたかせたところ,翅形状にかかわらずどの機体も飛び立ち後200mm程度下降し,その後は一定の高度を保って飛翔した.実際の蝶と同様に,飛翔中は上下動を繰り返していることも確認できた,高速度カメラを用いた運動解析の結果,種の違いによる飛翔の違いとして,アゲハチョウ科の翅形状を模した機体は,タテハチョウ科の翅形状を模したものよりも下降後により上昇傾向にあり,タテハチョウ科の翅形状を模した機体は,飛び立ち後の降下距離がアゲハチョウ科の翅形状の機体よりも短い傾向であることが明らかになった.つまり,アゲハチョウ科の飛翔は比較的上下動が大きく,タテハチョウ科の飛翔は上下動の少ない飛翔であることがわかった. 飛翔中の姿勢に着目すると,飛翔方向と体軸のなす角を迎角とした場合,その角度変化量の平均値はナミアゲハが約55deg,ジャコウアゲハが約61deg,アサギマダラが約34deg,オオゴマダラが約30degとなった.これは,アゲハチョウ科の翅の方がタテハチョウ科の翅よりも後翅の幅が狭く,はばたき時に機体重心まわりのピッチングモーメントがより大きくなるためであると考えられる. 以上より,種によって異なる翅形状が及ぼす飛翔軌跡と迎角変化の影響について,蝶型はばたきロボットの運動解析を行うことによってその一部を明らかにした.
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