研究課題/領域番号 |
21K03980
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
今津 篤志 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 講師 (80440246)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マルチコプター / 消防 |
研究実績の概要 |
本研究は高層ビル火災への放水を想定した、タンクを持つ大型のヘリコプターから放水ノズルを備えた小型のマルチコプターを懸下し、ノズルのみが近接して放水を行うシステムの実現性を確認することを目的とている。具体的にはタンクヘリコプターとノズルマルチコプターの物理的相互作用とスケールの影響を確認することと、放水を命中させるフィードバック制御方法を開発することを行っている。 ここまで、タンクヘリコプターとノズルマルチコプターの物理的相互作用の一つである、タンクヘリコプターからのダウンウォッシュに起因する、ホースとノズルマルチコプターへの風速とその風によって発生する力を、タンクヘリコプターを固定した状態の実験を行って測定した。風速の分布からタンクヘリコプターのホース接続部付近の影響のみ考えれば十分であると推測された。今後、他の効果や、スケールモデルをより実際の状況に近づけた実験を行っていく。 また、自動で放水を命中させるフィードバック制御方法を開発することを目的として、画像から放水の命中地点を検出する深層学習モデルの学習に取り組んだ。じょうろから出た水が跳ねる画像データに人手でアノテーションを行い、モデルを学習させた。学習に用いた放水では概ね位置を推定することができたが、ポンプと消防用ノズルを用いた放水で推論を行うと、最初の着水点で跳ねた水がさらに着水した点を検出するなどの問題が確認されたため、学習データの見直しや検出手法の改良が引き続き必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
タンクヘリコプターを模したペイロード20kgの農業用マルチコプターを渡り廊下から突き出して固定し、ロータを動かした状態で、その下の風速とホースにかかる力を測定した。 マルチコプターを振り上げての実験と放水しながらの実験は、進捗遅れのためまだ実施できていない。また、ホース長さも15mまでで、より長いホースを用いた実験は遅れている。 放水を命中させる制御方法の実現のため、カメラ画像から放水の着水点を学習させた。じょうろから出た水が跳ねる1万枚程度の画像データにおいて目視確認して画像中の着水点のXY座標を正解として与え、画像からXY座標を出力するモデルを学習させた。学習時と同じ放水条件では誤差1割程度で推論することができたが、ポンプと消防用ノズルを用いた放水の画像で推論させたところ、最初の着水点で跳ね返った水がさらに着水した点を検出するなどの問題が確認された。水が跳ねる様子は学習できたと推測されるが、学習に用いたじょうろでの水の跳ね方が、最初の着水では無く、そこから跳ねた水の勢いが弱まった着水と類似していたためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
放水マルチコプターの完成が遅れているため、早急に完成させて振り上げ放水実験を実施する。またホースの長さをより長くした実験を実施し、ホース15mでの実験と比較してスケールの効果を確認する。 タンクヘリコプターを飛行させての実験に向けて、農業用マルチコプターの飛行テストを行うとともに、縮小モデルでの予備実験を並行して進めていく。 放水の着水地点の検出においては、領域検出と組み合わせることでより精度を高めていくことを目指す。さらに、検出した着水地点を用いて、目標地点へのフィードバック制御を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗遅れのため、初年度に予定していたクレーンをレンタルしての実験が行えなかったため、次年度に持ち越した。 次年度に当該実験を実施する予定である。
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