研究課題/領域番号 |
21K03980
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
今津 篤志 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (80440246)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マルチコプター / 消防 |
研究実績の概要 |
本研究は高層ビル火災への放水を想定し、タンクを持つ大型のヘリコプター(タンクヘリコプター)から放水ノズルを備えた小型のマルチコプター(ノズルマルチコプター)を懸下し、ノズルのみが近接して放水を行うシステムの実現性を確認することを目的としている。具体的にはタンクヘリコプターとノズルマルチコプターの物理的相互作用とスケールの影響を確認することと、放水を命中させるフィードバック制御方法を開発することを行っている。 これまで行っていたホースの口径25A(直径25mm)での放水に加えて、屋内消火栓によく用いられる40Aのホースを用いて放水実験を行った。水平距離20m程度の放水で放水反力が50N程度であり、15inchのロータ4発で十分支えられる範囲であることが分かった。15mのホースで吊り下げた実験を実施し、30mのホースでの実験に向けた準備を行った。 大型ヘリコプターから小型のマルチコプターを懸下した状態での飛行を想定し、大型ヘリコプターを一般的な4発のマルチコプターで模した実験の準備を行った。離着陸時にノズルマルチコプターを損傷無く回収するためのプラットフォームを試作し、ダミーの懸下型マルチコプターを吊り下げた状態で、マルチコプターのプラットフォームからの離陸、着陸を行うことができた。 放水の自動制御手法の開発において、可視光画像から放水の命中地点を検出する深層学習モデルの学習に取り組み、Resnet18の出力層に2層の線形層を追加したモデルを、約2200枚のアノテーションデータを用いて学習させ、カメラから7m先の壁に着水する点を誤差0.8m以内の誤差で検出することができた。また地上に設置した放水ノズルをピッチ方向とヨー方向に動かせる実験装置を作成して自動制御実験を行い、7m先で30cm×50cm程度の窓の中に放水を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ノズルマルチコプターと制御システムの製作が遅れたため、全体に遅れが生じている。23年4月現在、ほぼノズルマルチコプターが完成し、これから統合できる状態にまではなっている。 放水の実験はノズルマルチコプターの実験と並行して別途進め、クレーンをレンタルしている会社と相談しながらクレーンからタンクを吊り下げた実験を準備中である。 放水の自動制御手法の開発においては、深層学習モデルを用いて放水の命中地点を検出することができた。実験確認は、懸下型マルチコプターの製作が遅れていたため、地上から放水を行う実験装置別途作成して確認を行った。こちらも順次、ノズルマルチコプターに適用していく予定である。 ノズルマルチコプターをタンクヘリコプターから懸下して飛行させる手法は、シミュレーションでは確認できているものの、実験による実証は遅れている。もともと農業用マルチコプターをタンクヘリコプターに用いて実験をする予定であったが、飛行場所と安全性の確保の問題から断念した。新たに実験用のタンクヘリコプターとして用いるマルチコプターの可搬重量の関係で、ノズルマルチコプターを小さくする必要があり、その再設計を行っている。 離着陸の際にノズルマルチコプターを損傷させないようにするプラットフォームの試作を行い、タンクヘリコプター相当のマルチコプターが発着できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
タンクのバランシングとバルブの遠隔開閉システムを作成し、レンタルしたクレーンからタンクとホース、懸下型ノズルマルチコプターを吊り下げて放水する実験を行い、ホースが長いときのスケール効果を確認する。 ノズルマルチコプターをタンクヘリコプターから懸下して飛行させるシステムにおいて、シミュレーションによりノズルマルチコプターとタンクヘリコプターの質量比による影響を明らかにする。トイドローンに用いられるDCモータを用いて十分に小型のノズルマルチコプターを作成し、飛行を実現する。 進捗の遅れを取り戻すため、研究メンバーを一人増やして、統括者を含めて5人で実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数を有効に活用するため。物品や施設利用料に充当する予定である。
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