本研究では,没入型VR装置であるHMD及びHMDと連動する脳波測定装置を用いて,研究の主目的である認知症予防のための効果的な手法について検討を 行った.具体的には,眼球運動が認知症予防に効果を有することを踏まえ,仮想ボールを眼球運動のみで打ち返すソフトウエアを開発し,ボールの挙動と脳波 (α波,β波)の関係を明らかにした.すなわち,ボールの挙動に関して,打ち返す難易度が難しくなるほど,α波とβ波の比(β/α)が増大することを明ら かにした.また,α波とβ波の比(β/α)の増大が認知予防に効果があるとの論文から,本研究で開発したHMDにおける眼球運動が認知症予防にも効果がある可 能性を有することが分かった.ここで,眼球運動によりボールを打ち返す板を制御する難易度に対しては,慣れによる効果減少が生じることから,難易度変化の タイミングの違いが脳波に与える影響を調べた.具体的には,難易度をステップ,周波数などにより変化させ,各条件における(β/α)の比較を行った.これ らの実験結果より,個人により最適な条件を有することを明らかにした. 足部親指への刺激が認知症予防に効果があるとの研究から,歩行時に足部親指を効果的に刺激する一本歯サンダルを提案した.そして,中敷き親指部に研究室 で開発したゴム要素(連泡型発泡ゴムをシリコンゴムでコーティングした要素)を配置することにより,歩行前後における足部血流が増加することを明らかにし た.また,要素形状の違いに関する検討も行い,肉厚が大きいほど効果を有することが分かった.さらに,サンダルにおける一本歯の設置位置,歯の高さによる 血流量の違いを明らかにした.その結果,踵部に一本歯を設置した場合,爪先部が床面に押し付けられることから,血流量が増大し,歩行に関しても安定歩行を 実現し易いことが分かった.
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