研究課題/領域番号 |
21K03991
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
野村 健作 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 教授 (80198621)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁力 / 変位縮小機構 |
研究実績の概要 |
人の指先の2~3㎝の動作を1/1000倍に縮小する変位縮小機構を単一体の無電力駆動機構で実現することを目的として研究を開始した。2021年度には,これまでのメカニカルなリンク機構による変位縮小機構を見直し,磁力を用いた無電力変位縮小機構を提案するとともに提案する原理に基づき1自由度変位縮小機構を試作し,その基本特性を実験的に検証すること次の結果を得た。(1)開発した変位縮小機構の発生変位は,永久磁石を移動させることで分解能18μm以下の位置決め性能を有し,微細作業の目的に合わせてフルストローク,変位縮小率をギャップによって設定できることを示した。(2)65mmの入力変位を273μmに変位縮小する機構を一体構造で実現した。高分解能変位センサで計測することで,さらに高縮小率を有することが期待できる。(3)発生力は永久磁石を移動させることで調整でき,確認できた最小発生力は,0.287N であり大きさ1mm以下の微小物を扱うのには十分な大きさをもっていることを示した。(4)磁力による非接触駆動機構であるので,永久磁石を手動操作しても弾性ビームに手振れが大きく伝わることがないことと,急激な操作に対して振動が励起されないことを確認した。これらの結果から,1/1000倍の変位縮小率を有する単一体の無電力変位縮小機構の実現することは可能と考えられるが,確認できた変位縮小率は,1/238倍であり目標に達していない。使用した変位計の分解能が不足するためで,次年度には高分解能レーザー変位計を使用して検証する予定である。さらに,今年度開発した1自由度変位縮小機構を進展させて2自由度変位縮小機構を試作し,性能を検証することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に課題を残した点として,試作した1自由度変位縮小機構において設定した性能の内,分解能や変位縮小率の数値目標を検証することはできなかったが,変位センサの分解能の制約によるものであるので高分解能センサを使用することで検証できるものと考えている。材料力学的な撓み量の計算値と比較するため弾性ビームを支える基盤の高剛性化を図ったため機構全体の寸法が大きくなってしまっていることに課題を残している。 予定通りの結果として,試作した変位縮小機構で指先で永久磁石を移動する手動操作実験を行い,プローブなどのエンドエフェクターを取り付けることを想定した弾性ビームの撓み量を変位センサの信号を視認しながら操作することで,粗雑に約50μmの幅のステップ状に操作できることを示した。操作スキルを身に着ければ高精度の操作が可能となると考えられる。また,懸念した手振れが伝わることや,永久磁石の急な操作によって弊害となる振動が励起されることがないことを確認した。磁力によって指先の動きが撓み量に力学的に繋がっているのでダイレクト感のある操作ができることも確認した。 当初の計画以上に進展している点として,変位縮小率を1/1000倍モードから1/100倍モードにするようなモード切り替えをギャップを調整することで可能になることを見出したことである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は,(1) 1/1000倍の変位縮小率を実験的に検証する。(2)2自由度変位縮小機構を設計・製作して基本特性を実験的に調査する。(3)磁力によって吸引される強磁性体材料(SS材)と磁場の影響を受けにくい常磁性体材料(アルミニウム材)でピンセットを構成する。当初ピンセットの開閉原理としてつぎの2方式を提案していた。(1)バイパス磁路を設けてピンセットに加わる磁力を調整するバイパス磁路方式。(2)永久磁石自体を動かすことで磁束が集中するポイント(力点)を移動させて,ピンセットの弾性変形量を調整する永久磁石スライド方式。初年度において(2)永久磁石スライド方式を採用した変位縮小機構を試作して所望の性能が得られたので,この方式を継承して2自由度変位縮小機構に進展させる予定である。想定される課題として,2自由度化のため利用する2つの永久磁石が互いに干渉しあうことで,1自由度機構には見られない特性をもつ可能性がある。この場合,干渉を回避する磁気回路に見直す必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症予防のため出張等で移動することを自粛したため旅費を使っていない。次年度以降にレーザー変位計およびその取り付けジグ購入費の一部として使用して高精度変位測定系を構成する予定である。
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