今年度は,マイクログリッド(MG)が若干の供給支障を許容する前提で設計した場合に,どの程度のコスト削減が達成されうるかに着目した.すなわち,電力・熱需要の常時の抑制を一定量許容した上で設備費・運用費の総和を最小とするようなMGの最適容量設計手法を提案した.また,電力や熱の供給率と,各設備導入量・総コストとの関係についてもモデル地域を対象に評価した. また,MGが電力系統の余剰電力を補償するための蓄エネルギー設備として,カルノーバッテリー(CB)と呼ばれる,電熱変換可能な蓄エネシステムを蓄電池の代替設備として導入することを検討した.CBはエネルギー変換効率や即応性の面で蓄電池に劣るものの,蓄電池より安価であり,特に長周期の蓄エネ用途での優位性が期待される.本研究ではその基礎検討として余剰電力補償を行うMGへのCBの導入可能性をコストの観点から分析した. さらに,商用電源停電時にMGを動的に構成するため,エリア単位での自立運転への移行順序を決定するための手法を開発した.その際に,避難所等による各エリアの優先度と,動的MG構成の中で,EV を移動式の非常用電源として導入し,EV を不足電力に対応させることを考慮した.併せて,非常用電源として使用する蓄電池に対して,時間毎に停電回避に必要な充電量を求める手法を開発した. 本研究によって,ヒートポンプとコジェネレーションを併用する熱電併給技術を,マイクログリッド(MG)に導入し,その等価的な蓄電機能を利用して,再生可能エネルギー電源の不安定な出力変動を抑制しつつエネルギー供給を継続できる防災型の地域MGの内部構成及び運用・制御手法が明らかとなった.
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