研究課題/領域番号 |
21K03995
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
曽根 秀昭 東北大学, データシナジー創生機構, 特任教授 (40134019)
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研究分担者 |
林 優一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (60551918)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電磁情報セキュリティ / 意図的電磁妨害 / 電磁的情報漏えい / ハードウェアセキュリティ / 電磁波攻撃 / 環境電磁工学 / 情報通信システム / 電子デバイス・機器 |
研究実績の概要 |
情報機器への意図的な電磁波妨害による故障及び情報機器からの電磁波放射により引き起こされる、電磁セキュリティに対する統一的なリスク評価と対策技術の体系化を目指し4項目の課題に取り組んでいる。 情報機器の故障を引き起こす妨害意図的な電磁波妨害について、暗号モジュールに注入する連続正弦波の周波数・位相・振幅を制御し、1バイト誤りを含む暗号文の発生頻度を高める手法を提案した。また、情報機器からの電磁波放射により引き起こされる電磁的情報漏えいについて、情報漏えいのリスク評価とサイドチャネル波形の計測精度の影響評価を行った。相関電力解析攻撃CPAは暗号化回路の動作に伴う消費電力波形を多数観測したものから統計的に秘密鍵を求めるものであるが、このときの暗号化チップの電源電流波形を測定する分解能を変化させて取得して秘密鍵の推定への影響を評価する実験を行った。その結果、波形取得のビット数をふやして分解能を高めた条件で秘密鍵の取得性は向上しなくなることが明らかになった。その原因として周辺にある回路がノイズ源となることや暗号化回路から波形観測点までの伝達関数によって取得したサイドチャネル波形へ劣化を与えていることが考えられる。さらに故障発生メカニズムとサイドチャネル波形の発生・伝達の分析とリスク評価の結果からの対策技術として検討を継続する。 情報機器の放射電磁波による情報漏えいについて、情報機器の表示画像からの情報漏えいの検討として、意図しない電磁的漏えいのモデルを考察して、QRバーコード画像の傍受により生じるリスクの評価手法を提案して、実験により適用の効果を示した。これに基づいて、情報機器の放射電磁波情報漏えい抑制対策技術の一例として、情報漏えいリスクを低減できるQRバーコードデザインを提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情報機器への意図的な電磁波妨害による故障及び情報機器からの電磁波放射により引き起こされる電磁セキュリティの課題について、電磁的情報漏えいの統一的なメカニズム解明と対策技術の体系化を目指すことが本研究の目的である。 課題 (1)のうち、情報機器の故障を引き起こす妨害意図的な電磁波妨害について、暗号モジュールに注入する連続正弦波の周波数・位相・振幅を制御し、1バイト誤りを含む暗号文の発生頻度を高める手法の実験的な基礎検討を進めている。また、情報機器からの電磁波放射により引き起こされる電磁的情報漏えいについてリスク評価とサイドチャネル波形の計測精度の影響評価を行って、波形取得のビット数をふやして分解能を高めた条件で秘密鍵の取得性は向上しなくなるなどの成果を得た。この成果に基づき引き続き、課題(2)としてサイドチャネル波形の発生・伝達の分析とリスク評価の結果からの対策技術として検討を継続する。 課題(3)情報機器の放射電磁波による情報漏えいについて、情報機器の表示画像からの情報漏えいの検討として、QRバーコード画像の傍受により生じるリスクの評価手法を提案し、これに基づいて課題(4)の情報機器の放射電磁波情報漏えい抑制対策技術の一例として、情報漏えいリスクを低減できるQRバーコードデザインを提案した。 以上のようにおおむね順調に成果が得られている。これらの成果の発表・講演のために参加することを計画していた国内外の研究会合の多くはリモート開催の形態で3回の学会発表及び1回のレター論文発表となった。計画していた会場参加による参加者との議論交流及び得られたコメントの反映は次年度に繰り下げて実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
課題 (1)のうち、情報機器の故障を引き起こす妨害意図的な電磁波妨害について、暗号モジュールへの故障注入に関する基礎検討を継続して進め、故障発生メカニズムの分析を推進する。また、情報機器からの電磁的情報漏えいについて、課題(2)としてサイドチャネル波形の発生・伝達の分析とリスク評価の結果からの対策技術として検討を継続する。 課題(3)情報機器の放射電磁波による情報漏えいのリスクの評価手法と課題(4)放射電磁波情報漏えい抑制対策技術について、検討済のものと異なるモデルを設定して評価と提案を検討する。 これらの成果について国内外の研究会合で発表・講演して、とくに会場参加による参加者との議論交流により得たコメントや示唆の研究推進への反映は今後に繰り下げて実施することを予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 研究の進捗についてはおおむね順調に進展しているが、研究組織内の打ち合わせや調査・研究と成果発表のための研究会合参加については新型コロナ感染症拡大防止のために研究会合の開催や旅行が制約されていたために実施できずに予算に計上していた旅費の執行が困難であった。 使用計画 次年度では研究会合の開催状況や旅行の制約の状況を見極めたうえで、可能であれば国内外の研究会合で成果を発表・講演して、とくに会場参加による議論交流により示唆を得ることを予定する。
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