研究実績の概要 |
SF6ガス電力機器が築いた電力システムの安全性・堅牢性を保ちつつカーボンニュートラルを実現する社会のため,温室効果ガスのSF6ガスを用いない高電圧遮断器の開発が急務である.遮断器では,系統で事故が発生したとき,大電流を遮断するために電極を開極する.このとき,電極間には高温高圧のアーク放電が生じる.電流遮断後に電極間に残留するアークプラズマは,3,000 K以上の高温で高い導電性を有し,電流遮断直後に印加される過渡回復電圧によって再び放電が生じやすい状態である.数千Kの高温場を実現する方法が,経験則に従いモックアップモデルを作成し,実際に電流遮断試験を行う他にない,という課題に対し,本研究課題では,誘導熱プラズマ装置により絶縁ガスを安定的に高温化し,再現性よく電気絶縁特性を評価する手法を開発することを目的とした. 代替ガス候補であるCO2ガスはその本来の用途から,点弧した誘導熱プラズマを消弧させる可能性があるため,高温化・プラズマ化が困難であることが予想される.そこで,本試験装置では,Arシースガスにより誘導熱プラズマを安定的に生成・維持し,別途プラズマトーチ中央の水冷チューブから絶縁ガスを直接,熱プラズマ中に導入することで,絶縁ガスの高温化を実現した.さらに,プラズマトーチに対して,異なる周波数電源を接続したコイルをトーチに直列に設置することで,上段コイルでは安定的なプラズマ・高温場の維持,下段コイル電力の調整により,絶縁ガスの温度制御性の向上を図った.下流チャンバーにおける電極間に対する発光分光測定から温度を推定した結果,5000 Kから6500 K程度のCO2ガス温度を実現できた.また,高温化した絶縁ガスの温度制御は,下段コイル電力,導入する絶縁ガス流量などのパラメータにより制御可能であることが示された.
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