研究課題/領域番号 |
21K03998
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
卜 穎剛 信州大学, 工学部, 特任准教授 (70647940)
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研究分担者 |
佐藤 光秀 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (80793968)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 磁性テープアルミリッツ線コイル / 銅リッツ線コイル / ワイヤレス給電 / 磁性コンポジット材料 |
研究実績の概要 |
電動車両の走行中ワイヤレス給電システムは、電磁界を介して電気エネルギーを走行車両に伝送するシステムであ車両側に搭載した受電コイルが電磁界を受けて電力を伝送する。送電コイルの導線内に発生する交流銅損を低減するために、銅リッツ線が使用されているが、製造コストが高く、コイルが重くなるため、走行路に大量に配置する点において、実用化の障壁となっている。そこで、私たちは軽量・安価・高周波駆動時の低損失を並立可能とする磁性テープ巻アルミニウムリッツ線コイルを提案した。アルミリッツ線の周囲に磁性テープを装荷することで、隣接する巻線からの磁束を誘導し鎖交量を抑制し,交流銅損を低減することを予想される。また,走行中コイルの位置ずれによる伝送効率の低下の改善も期待できる。 ワイヤレス電力伝送の周波数帯85kHzでは、コイルの損失のうち、交流銅損の比率が大きくなるため、磁性材料を適切に装荷し、コイルへの磁束鎖交を抑制することが求められる。そのため、テープに用いた磁性材料の比透磁率の向上とともに、低鉄損の両立が求められる。 今年度は,磁性テープの磁性材料の磁気特性を向上するために、磁性粉(Fe系アモルファス合金粉、ナノ結晶材)の種類・配合比率の異なる材料を検討した。そのなか,粒径40マイクロメートルのセンダスト球状磁性粉を充填率50vol.%にて磁性コンポジット材料を試作して特性を評価した。 また,磁性テープがリッツ線コイルに影響するテープの厚さおよび形状が特性への影響について,磁気特性のシミュレーションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までの進捗状況について,磁性テープに用いた磁性材料の製作と磁性テープの形状シミュレーションの二つの項目を行った。 ①磁性テープ材料の磁気特性を向上するために、磁性粉の種類・配合比率の異なる材料を検討した。そのなか,粒径40マイクロメートルのセンダスト球状磁性粉をシリコンゴム系バインダーに充填率50vol.%にて磁性コンポジット材料を試作してた。試作した材料の比透磁率は約7.5,損失係数は約0.056であった。試作した材料を用いて,素線数798本の銅リッツ線表面に塗布して送受電コイルの特性も評価した。送受電コイルの交流抵抗はそれぞれ約4.6%と2.9%が低減された。また,磁性材料で塗布した送受電コイルが80㎜の位置ずれ時の効率は約0.8%が向上した。磁性材料がリッツ線コイルの損失低減効果が確認された。 ②磁性テープがリッツ線コイルに巻き付ける際,テープの厚さと形状が特性に影響することを想定し,その特性を磁気シミュレーションで解析した。磁性テープが巻いてない,および磁性テープの厚さが0.1,0.2,0.3㎜において,交流抵抗がそれぞれ121,59,49.6,46.2mΩとなり,テープ厚さの増加により抵抗が低くなるが,低減効果が少なくなる。従って,テープの厚さが0.1-0.2㎜では最も有効である。テープの形状について,リッツ線コイルの外側だけ0.2㎜に巻くA形状とリッツ線の下部だけ0.2㎜巻くB形状を検討した。その結果,テープなしとA,B形状の交流抵抗はそれぞれ121,57.4,53.4 mΩとなり,下部だけ0.2㎜巻くB形状は低減効果が大きいとなったと確認した。
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今後の研究の推進方策 |
磁性テープの材料について,比透磁率の7.5は目標より比較的低いので,今後,比透磁率向上の検討を行う。その方法は粒剤形状とサイズの異なる磁性材料の適宜混合による充填率の向上と低粘度バインダーへの適用による充填率の向上を試みる。第1段階の比透磁率は10-15を目標している。 その磁性材料を用いて,テープ製造装置にて磁性テープを試作し,磁性テープ巻アルミリッツ線コイルを製作する。上記したAとB形状の試作を行い,シミュレーション解析の妥当性を検証する。また,走行中の送受電コイルの位置ずれした際の伝送効率特性を測定し,磁性テープ巻アルミリッツ線コイルの伝送効率低下影響の抑制効果を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルミリッツ線コイルの試作に関して,海外メーカーから調達予定だが,材料価格高騰および納入ロットの関係,国内メーカーに少量試作変更のため,金額変更が生じた。翌年度には,改良のため2回目試作を想定しており,翌年度分として請求した助成金と合わせて,コイルと試験装置の製作に使用予定である。
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