研究課題
今後利用が拡大するミリ波帯電波に対する人体の安全性について関心が高まっている。このような背景から、本研究では、温熱生理応答計算モデルを、実測データをもとに高精度化、複数体モデルを考慮し、国際ガイドラインにおいて課題となっているばく露量の変動を定量化することを目的とした。2022年度までに、組織の物理定数における個々人間のばらつきを考慮できるよう、機械学習を用いて、頭部のMR画像から熱パラメータを推定可能とする非セグメンテーションモデルを新たに構築、従来の非セグメンテーションモデルを用いた解析と比較することで、有効性について示してきた。また、電力吸収分布、温度上昇分布は、非セグメンテーションモデルを用いたほうが、組織境界におけるアーチファクトを軽減できることを示した。2023年度では、6GHz以上でおもに電波が吸収される皮膚組織に着目し、ばく露実験で得られた温度上昇と皮膚血流の関係から温熱生理応答モデルの高精度化を行った。さらに得られた温熱生理応答モデルを用いた複合物理解析を行い、複数のばく露条件を計算で再現し、皮膚温度上昇解析を行った結果、今回用いたばく露実験のすべての条件において、実測値のばらつきの範囲内で、良い一致が得られることを示した。また、2022年度までに開発した非セグメンテーションモデルを複数体構築し、局所ばく露における基本制限値である10g平均SAR、吸収電力密度の周波数特性を導出した。その結果、従来モデルと非セグメンテーションモデル間での差は、最大で15%と良い一致が得られた。また、最大温度上昇値の差異は、最大で7%となった。さらに、単位基本制限値あたりの温度上昇である加温係数のばらつきは、表面に電力が集中する高周波数帯においては、非セグメンテーションモデルの結果のほうが、個々人のモデル形状に対するばらつきが小さくなることについても明らかにした。
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