研究課題/領域番号 |
21K04001
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
青木 睦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70362316)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 配電系統の保護システム / 分散形電源 / 多地点同期計測システム |
研究実績の概要 |
本研究では,VPP(Virtual Power Plant)など小規模電力系統を含む将来の配電システムにおいて,多地点同期計測システムによる状態監視および,それによる系統の状態把握,そして,その状態に応じた適切な保護方法を提供する保護システムを確立することを目的とするものである。2021年度は,計測システムからの情報収集と系統故障を模擬するシミュレーションモデルを構築すること,および,配電線の状態を推定するアルゴリズムの開発について検討を行った。 現在の配電系統は,配電用変電所から配電線が樹枝状に広がり,一般家庭やビルなど負荷となる需要家がつながる構成となっている。将来は,太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーによる電源やその変動を抑制するための蓄電池システムが広がることが予想されるが,そのような分散型エネルギーリソースは,直流から交流への電力変換を行うインバータを介して配電系統と連系される。しかし,従来の電源とは異なる特徴を有することから,系統故障時の振る舞いを検討する必要がある。このため,2021年度はインバータ型の電源が多数連系したときの将来の配電系統を模擬するシミュレーションモデルを構築した。また,適切な保護システムの構築に向けて,配電系統における負荷やエネルギーリソースの状態について,機械学習を用いて推定する方法の基礎的な検討を行った。 太陽光発電などの再生可能エネルギー電源が大量に連系された場合の配電系統の保護システムの構築は,将来の配電系統において重要な課題である。本研究で作成したインバータ型の電源が主体となる配電系統のシミュレーションモデルは,今後の研究の推進のベースとなるものである。このような多数のインバータを連系させたモデルのシミュレーションは,過去にも事例が少なく,貴重な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽光発電システムや蓄電池システムなどの分散型のエネルギーリソースが多数連系される将来の配電システムの系統故障時の応動評価と保護システムの構築に向けて,系統のシミュレーションモデルの構築を行った。このようなインバータ型の分散電源が主体となる配電系統において,事故時の基本的な動作を確認することができている。その結果,短絡容量の増加による事故電流の増加より,インバータの電流制限による事故電流の減少などが課題であることが分かった。今後は,構築したシミュレーションモデルを用いて,さまざまな条件で系統故障のシミュレーションを行い,それを踏まえた適切な保護方法の検討をしていく予定である。また,負荷の状態の推定結果を配電系統モデルへの反映していくことについては,今後の課題として残されている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,保護リレーの適切な整定値の検討として,まず,将来の配電系統モデルに対する故障電流の分布の把握を行う。具体的には,作成した配電系統モデルをベースとして,様々な系統構成や,様々な故障条件において,故障電流の分布を把握し,配電系統の状態推定結果との関係について分析を行う。今年度に購入した計算機を活用して,このような多くの条件における系統故障のシミュレーションを実施していく。このシミュレーション結果を分析し,配電系統の状態に応じて,保護システムの適切な整定値の決定アルゴリズムの構築について検討を行う。そのアルゴリズムの有効生について,汎用型の保護・制御装置であるIED(Intelligent Electronic Device)が,将来の配電線に設置されることを想定して,検討したアルゴリズムをIEDに組み込み,研究室で有しているリアルタイムディジタルシミュレータを活用して,基礎的な検証試験を実施していく。 また,系統故障時における系統の電圧や電流は,分散電源の発電状態や負荷特性に依存する部分も大きいと考えられる。このため,配電系統の状態推定に関して,2021年度に実施した機械学習による推定の結果を用いて,分散電源の発電量の予測や,負荷特性の把握を行うことについて検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
IEDによる実証試験を行うため,実験用部品等の消耗品を次年度に購入することとした。
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