研究課題/領域番号 |
21K04007
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
岩尾 徹 東京都市大学, 理工学部, 教授 (80386359)
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研究分担者 |
鈴木 憲吏 東京都市大学, 理工学部, 准教授 (20638134)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アーク放電 / 陰極点 / 酸化膜除去 / パワーエレクトロニクス / 三次元電磁熱流体シミュレーション / 陰極点挙動 / プラズマ / 3R |
研究実績の概要 |
今年度は「初期圧力と磁束密度変化時におけるイオン分布の数値解析と観測」と題し、令和3年度の成果を駆使し,研究を行った。具体的には、2温度1流体とT-F理論を考慮した3次元電磁熱流体解析手法を確立し,初期圧力と磁束密度変化時におけるイオン分布の数値解析、並びに、陰極点の移動のシミュレーションを行った。また,陰極点の移動を制御する電流発生回路と磁界印加装置,バンドパスフィルタ,ハイスピードカメラ、多点分光技術を用いた計測手法を確立し,初期圧力と磁束密度変化時における陰極点の移動時の電子温度やイオン温度を算出するための計測と計算を行った。 結果として、2温度1流体とT-F理論を考慮した3次元電磁熱流体解析手法を確立ができ,初期圧力と磁束密度変化時におけるイオン分布の数値解析、並びに、陰極点の移動のシミュレーションを行うことが可能となった。また、多点分光技術を用いた計測手法を確立することができ,初期圧力と磁束密度変化時における陰極点の移動時の電子温度やイオン温度を算出するための計測と計算陰極点の非平衡性と動きには、何かしらの相関があることが示唆された。 また、AIを活用したシミュレーションの高効率化やデジタルツイン化に向けた取り組みを行った。これは、PCの性能だけでは、これ以上の計算の高速化が図れないためである。この点についても、学習に時間がかかるものの、チューニングがうまくいけば、計算時間が2/3になる知見を得た。ただし、精度はまだまだ低いため、今後も取り組みをしていく予定である。 なお,研究の推進において、陰極点の移動を制御するためのパルス電流発生回路と磁界印加装置が、従来より性能が向上していないという課題が生じた。今後、さらに回路を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では,当初の目的通りのシミュレーション、実験を行い、不合理のない知見を得ることができた。具体的には、2温度1流体とT-F理論を考慮した3次元電磁熱流体解析手法を確立ができ,初期圧力と磁束密度変化時におけるイオン分布の数値解析、並びに、陰極点の移動のシミュレーションを行うことが可能となった。また、多点分光技術を用いた計測手法を確立することができ,初期圧力と磁束密度変化時における陰極点の移動時の電子温度やイオン温度を算出するための計測と計算陰極点の非平衡性と動きには、何かしらの相関があることが示唆された。 さらに、シミュレーショの時間短縮を狙い、AIを活用したシミュレーションの高効率化やデジタルツイン化に向けた取り組みを行い、学習に時間がかかるものの、チューニングがうまくいけば、計算時間が2/3になる知見を得た。 一方、陰極点の移動を制御するためのパルス電流発生回路と磁界印加装置が、従来より性能が向上していないという課題が生じている。しかし、解決の糸口は見いだせていることと、この装置が従来通りの性能であったとしても、多点分光技術が確立できたことで、当初の「超高速酸化膜除去手法の確立に向けた大気圧非平衡アーク陰極点の移動現象の解明」には支障がないことが示唆される結果を得ることができた。 以上より,当初の計画通りの目的を達成し、最終年度に、当初の研究課題の解明を図るための準備が整ったため,(2)おおむね順調に進展している,とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,予定通り,令和3年度と4年度の知見を活かし,大気圧非平衡アーク陰極点の移動制御手法の確立へ向けて、取り組みを行う。具体的には,陰極点の動きを見ながら移動現象の解明を図るために、より長時間のシミュレーションを行うことと、AIの精度をさらに向上させること、並びに、シミュレーションの高速化を図る。また、さらに回路を検討し、パルス電流発生回路と磁界印加装置の性能控除をはかると共に、多点分光技術の精度の向上も図り、再現性を高めていくことで、当初の目的の解明を図る。 このことにより、当初の研究計画で述べた、大気圧非平衡アーク陰極点の移動現象の解明を完遂する。具体的には,電子や中性粒子,イオンに偏りを生じさせることで大気圧非平衡アークを発生させ,得られた計算結果と観測結果より移動現象を解明し,低真空下での表面処理技術への知見を得る。 最後に、以上の3年間の成果をまとめ,得られた知見を、国際会議や国内会議にて発表を行うことで,研究者との意見交換を行うと同時に,論文誌への投稿、社会への啓発活動を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍やウクライナ問題等により、AI用のPCの納期が年度内に確定できず購入を見送ったことや、学会参加がオンライン開催になったため、当初予定の支出が不要となったこと等による。次年度は、早めにAI用のPCを発注することとする。また、実験に必要なガスなどの消耗品や論文掲載料などにも使用する予定である。
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