本研究課題は,回転磁界より回転子が速く回転する,これまでにない新しい高速モータの開発を目的としている。 従来の同期モータは,回転子が回転磁界と同じ速度に同期して回転することでトルクを発生している。一方で,提案するモータは固定子と回転子の歯数の組み合わせによってモータ自身が磁気ギアのような効果を生じ,回転子が回転磁界より速く回転する増速の効果を得ることができる。本研究課題では,提案するモータについて,(1)回転の原理および発生するトルクの解析的検討,(2)有限要素法解析と実機試験によるトルクの検証,(3)実用化に向けた性能向上の基礎的検討,等の項目について実施した。 2021年度には試作機のインダクタンスや電圧・電流の関係を理論・実験の両面から検討した。特に,提案するモータの制御に使用する仮想の回転座標系の物理的な意味や回転子に合わせて設定される回転座標系上で各パラメータがどのように表されるのか,一般的な同期モータの制御に利用されるdq座標系上のパラメータとの関係がどのようになるのか,などにつてい明らかにした。 2022年度は試作機のトルクが有限要素法解析と実機試験でどの程度一致するかを検証した。一般的な同期モータではdq座標上のインダクタンスを用いてトルクを表現できるが,提案する増速形バーニアモータでは不可能であるが,2022年度の検討の結果から,仮想の回転座標系においてインダクタンスを定義することで電流とトルクの関係を従来の同期モータのと同様に扱えることを明らかにした。 2023年度では,提案する増速形バーニアモータの実用化にむけた性能向上のための検討を行った。いくつかの出力・トルク向上のアイデアを提案・検証することはできたが,本報告の執筆時点では設計の完了には至っていない。また,2022年度までの実施内容はIEEEの主催する国際会議であるAPEC2024で発表された。
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