研究実績の概要 |
再生可能エネルギー社会の実現および電力需要の増加に対応するため,電力ケーブルをはじめとする電力機器の大容量化および高信頼化が進められている.また現在主流となっている交流電力送電をHVDC送電に置き換えることができれば,充電電流等による損失が払拭され,エネルギー損失を小さくすることが可能になる. しかし電力機器に使用される固体絶縁材料では,HVDC印加時に空間電荷が材料界面等の欠陥に蓄積し局所電界が集中する箇所が弱点になる可能性がある. 最近,3Dプリンタ技術がさまざまな材料を成形できるようになり注目を集めている.3Dプリンタを用いて複雑な形状の電気絶縁材料の製作が行われた場合,これらの有効性を検討するため,空間電荷蓄積および直流絶縁破壊に及ぼす影響を解明することが重要である.今年度は,試料の材料として,アクリルエラストマーを用いた.試料厚さは1 mm程度であり,積層した一層の高さは0.1 mmおよび0.05mm である.積層方向は,シート面に対して水平(試料H)である.また積層面を含まない試料も作成した(試料N).試料N,試料H-0.1(ピッチ0.1mm)および試料H-0.05(ピッチ0.05mm)の3種類の試料に,10kV/mmの電界を印加することで,空間電荷蓄積の効果を調査した. 試料Nにおける空間電荷分布から,印加電界が大きくなるにしたがって,陰極付近に形成される正極性の空間電荷密度が大きくなった. また試料をアクリルエラストマーからアクリル樹脂に変化させても,試料Nよりも試料Hにおいて正極性の空間電荷が多く蓄積されることがわかった。このことから電界方向に対して積層面が垂直(試料H)である場合,正極性の空間電荷が蓄積されやすい可能性が考えられる。 研究期間全体を通して試料の材質に関わらず電界方向に対して積層面が垂直(試料H)である場合,正電荷が蓄積されやすいことがわかった。
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