研究課題/領域番号 |
21K04012
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
柳生 義人 佐世保工業高等専門学校, 電気電子工学科, 准教授 (40435483)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非平衡大気圧プラズマ / プラズマ医療 / プラズマ医療用デバイス / 多孔質膜 / マイクロプラズマ |
研究実績の概要 |
大気圧プラズマジェットや大気圧浮遊電極型誘電体バリア放電により生成した大気圧低温プラズマのがん治療応用が盛んに研究されているが,照射場所が限定的であり,すべての部位に適用可能なプラズマ直接照射法は開発されていない。本研究では,気相と液相を多孔質膜で分離することで,気相で生成した活性種を液相に供給することのできる非平衡大気圧プラズマ源のプロトタイプを開発した。液中への活性種の供給については,インジゴカルミン水溶液の酸化脱色試験およびヨウ素でんぷん反応を用いて調べ,活性酸素種の生成および供給を確認した。ヨウ素でんぷん反応によりプラズマ源からの活性酸素種の進展を観測したところ,プラズマデバイスの形状に沿って呈色し続け,処理時間に依存して電極近傍の呈色反応はさらに進み濃い青紫となった。プラズマ源から1cm程の位置でも薄い呈色が観察されたことから,時間経過とともにROSの分布が同心円状に広がっていくことを確認した。また,ヒト肝がん細胞(Hep G2; JCRB1054)に対して,プラズマ源により生成した活性種の影響を調べたところ,処理時間に依存して指数関数的に減少した。雰囲気ガスの酸素ガスと窒素ガスの混合比が肝がん細胞に与える影響について調べたところ,酸素の混合比が高くなると生細胞数は大きく減少し,窒素の混合比が大きくなると生細胞数はほとんど変化を示さなかった。多孔質膜を介した大気圧プラズマ源において,ヒト肝がん細胞はオゾンや過酸化水素などの活性酸素種によって細胞死に至ることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画に沿って,多孔質膜を介した大気圧プラズマ源のプロトタイプの開発に成功し,そのプラズマ源により生成した長寿命活性種のヒト肝がん細胞へ与える影響を調べることができたため,本研究は順調に進展しているといえる。一方,購入予定であった蛍光マイクロプレートリーダーの導入が遅れているが,次年度前期に購入する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究にて開発した大気圧プラズマ源の多孔質膜を通過する長寿命活性種が3次元培養したがん細胞スフェロイドに与える影響を調査する。また,電子スピン共鳴装置によるスピントラッピング法を用いて,短寿命活性種の供給の有無を明らかにする。また,2次元培養したがん細胞と比較することで,がん組織内への活性種の浸透効果を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
「蛍光マイクロプレートリーダー」が導入できなかったため,次年度使用額が生じてしまった。申請時に計上したR3年度物品費3,230千円に対して,実際は2,300千円の配分であったため,いくつかの機種を検討し値引き交渉を行ったが,導入に至らなかった。翌年度分として請求した助成金と合わせることで,R4年度前期には購入する計画である。
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