研究課題
本研究では、高電圧半導体スイッチを実用化するため、高電圧印加時のコロナフリーを実現し、信頼性と寿命に優れる新しい絶縁筒の開発を目的とする。金属と絶縁体が密着して空気層が無くなり、さらに、強電界部を絶縁体内に形成する曲面形状を絶縁筒で実現できれば、空気絶縁に頼らず三重点の強電界を緩和する高絶縁構造を確立できる。そこで、絶縁体の表裏両面のメタライズと電位の固定、及び絶縁体形状の最適化を試験で確認し、強電界緩和方法を確立する。絶縁筒と銅リングは、それぞれ同軸二重円筒型の内側円筒と外部円筒を構成する。令和5年度は、絶縁筒の金属面と半導体スイッチ基板に設けた銅リングの間で電位を確実に固定する新構造を設計した。湾曲した板バネ形状の接触子を採用した。板バネの湾曲部分が絶縁筒上の金属面に押し当たるように接触子を銅リングに固定させた。絶縁筒には銅リングと同電位にする銅タープを貼り付けた。銅テープと絶縁筒の間には、コロナ放電が発生する要因となる隙間と空気層が生じないようにオーバーラップさせて貼り付けている。4枚の半導体スイッチ基板を直列に接続し、3kV/2kAの出力で試験を行った。絶縁筒が有る場合と無い場合の比較試験を行い、絶縁筒の装着により出力波形に有意な乱れが発生しないことを確認した。これは、出力性能に影響を与えずにコロナフリーの運転ができることを示している。三年間の研究期間を通じて、絶縁筒と銅リングの最適な構造の確立を目的に試験を進めてきた。そして、最終年度において、最適な接触子構造を設計し、接触子を用いた電位固定方法の優位性を確認することができた。強電界を緩和しコロナフリーを実現する構造を確立することができた。
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 2687 ページ: 082021~082021
10.1088/1742-6596/2687/8/082021