研究課題/領域番号 |
21K04015
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
梅谷 和弘 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (60749323)
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研究分担者 |
平木 英治 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (20284268)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ワイヤレス給電 / 植込み型医療機器 / 制御回路 / 磁界共鳴型 / 磁気干渉 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究では,申請書において当初より提案しているワイヤレス給電システムにおいて,製造誤差や磁気干渉に伴う共振周波数のばらつきや変化によらず安定的な送電能力を実現するための具体的な制御方法の要件を理論的に解析し,その妥当性を実験的に実証した。理論解析では,ワイヤレス給電システムの回路動作において,電力を担う基本波成分の電圧・電流波形の振る舞いに着目し,基本波成分のみの動作を表現する等価回路モデルを構築した。この等価回路モデルの動作を分析した結果,送電器の交流電源に対して同期するように送電器のATACを位相差0°で,かつ,受電器のATACをすべて位相差90°で動作させることで共振周波数のばらつきや変化によらない送電能力が実現できることを発見した。 さらに,このように理論的に導出したATACの動作条件の妥当性を確認するため,提案するワイヤレス給電システムの実験回路を構築し,このATACの駆動条件における送電電力の特性を評価した。この実験では,製造誤差や磁気干渉に伴う共振周波数のばらつきや変化を想定し,受電器の共振周波数を敢えて最適値からずらしたときの送電電力の変化や,複数の受電器間の磁気結合を変化させたときの送電電力の変化を評価した。その結果,理論的に予想したとおり,受電器の共振周波数の変化や,受電器間の磁気結合の変化によらず一定の送電電力を得ることが確認でき,提案システムが期待通り有望であることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,2022年度の前半までに,提案するワイヤレス給電システムの制御方法を明らかにすると伴に,それによる有線通信を用いた制御システムを構築した上で動作を実証する予定としていた。本助成事業の初年度にあたる2021年度が完了した現時点において,提案するワイヤレス給電システムの制御方法を明らかにすると伴に,その原理上の妥当性を実験的に確認することを達成できており,当初計画に沿って順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究においては,年度前半において,2021年度では手動で行っていたATACの制御を電子化し,自動での制御の実現に取組む。ただし,この段階では, ATACやインバータの制御回路間は有線で通信することで,適切な位相差を探索・実現するシステムを開発する。この自動制御システムの達成を確認した上で,2022年度後半から2023年度前半にかけて,有線での通信を無線化するシステムの開発に取組む予定である。無線化に際しては,比較的簡単な回路で実装可能であり,かつ,無線通信の方法としては法律としても規制が少ない赤外線通信を採用する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は,2022年度に構築する制御回路に必要な部品も2021年度内に調達する予定であったが,世界的な半導体不足および物流の混乱を受けて,納品の目途が立っていない部品が多く,これらの部品を2022年度に購入することになってしまった。また,研究設備として電流プローブとそのアンプを購入する予定であったが,これについても世界的な半導体不足の影響を受けてしまい,購入を延期せざるを得ない事態となってしまった。以上の結果,当初計画に比べて助成金の使用実績が少なくなった。なお,2022年度には予定通り電流プローブおよびアンプを購入できる見込みである。
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